浪華紙魚百景 大商大商業史博だより

絹糸仲組焼印株

2013年4月10日

株札はなぜ五角形か

文化10(1813)年の丹波屋七郎兵衛宛ての株札。高さ15.5センチ、幅12.5センチ

 朝夕解錠施錠で博物館を回って展示品を見ていると、いろいろ気になることがでてくる。今は「株札はなぜ五角形か」が気になる。株札といっても花札ではなく、「株仲間の構成員としての権利、義務を示す札」と日本国語大辞典にあるそれである。

 「普通は木札で焼き印があり、幕府か藩が渡すものと、株仲間の役員が出したものとがあった」。なるほど役割も材質もその通り。しかし、木札なのだから、四角形でもいいはず。当館にある株札はどれも将棋の駒と同じように、裾広がりの五角形で、高札や絵馬の形をも思わせる。

 将棋の駒は興福寺で出土した最古の11世紀前半のものから既にしてあの形。高札は奈良時代末期からというが、形としては江戸時代のものが思い浮かぶ。「家型」と説明される通りで、屋根が付く。

 絵馬は、上代には生きた馬が神社寺院に奉納されたのが始まりで、木や土、紙の馬で代用される時期を経て、平安時代には絵の馬になり、その後馬以外のものも描かれるようになった。現在でも絵馬を奉納するのは盛んだ。小型で粗製になったのは近世末期からという。

 そこでまず、駒職人で将棋駒研究者でもある熊澤良尊さんになぜ五角形なのかを伺ってみた。

 将棋はもともと東南アジアから伝来したのだが、駒は中国では丸、朝鮮半島では八角形だったのが日本では五角形になった。一つには敵味方の駒を区別するのに駒を方向付けるため。とがらせれば進行方向がすぐ分かる。三角形でもよいが、五角形のほうが持ちやすい。裾広がりの部分を部厚くすると、持ちやすく、重心が手前に来て安定する。チェスの駒などに比べ、「成る」場合にも裏返せばよい。全て合理性に貫かれているのが日本の将棋の駒の特徴だという。

 その上、実は簡単に作れる。正目に沿って木を裂くと、断面がガタガタになるが、斜めに角度をつけて削るとシャープに切れ、仕上がりも美しい。裾を広げるのは作る上での合理性からきているのだという。

 加えて熊澤氏は、高札や大絵馬が五角形で上が屋根型になっているのは、雨に降られても水が流れ落ち、朽ちにくくなるからで、左右に振り分けるのも合理性からという考えを示された。

 さて、雨に当たるでもなく、指すのに方向性が必要なわけでもない株札が、なぜ裾広がりの五角形なのか。将棋の駒と同じ作りやすさと、高札や絵馬が象徴する権威を形として継承したのではないか、と私は考える。

 いずれにせよ、物の形は合理性に貫かれ、それはやはり作る人が一番よく知っている。またそれが一番美しいことも。

 (大阪商業大学商業史博物館専門職員・岡村良子)


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