大阪発 癒やしの温泉巡り

長野県・崖の湯温泉 「薬師平 茜宿」

2017年1月7日
入浴しながら北アルプスの峰々やあかね色に染まる夕空が眺められる絶景野天風呂

 「日本秘湯を守る会」創立当時からの会員の宿で、北アルプスと松本平を見渡しながら入浴できる絶景の野天風呂を持つ。雑踏を離れ、森へ向かって白樺の小道を分け入る。鉢伏山山麗の静かな山里に民芸の趣ある宿がたたずむ。

 この地は、鎌倉時代より土地の豪族が山城を築いていた。1881(明治14)年頃に村人が、鎌倉時代に起きた崖崩れの際に湧き出していた鉱水で1匹の猿が傷口を癒やしているのを見つけた。それ以降人気のある湯治場として利用されてきた。いつの日からか地元では、「神経痛なら崖へ行け」と言われるようになった。

 創業120年の「薬師平茜宿(あかねじゅく)」は、今は4代目の山村和永氏が中心になってこの宿を切り盛りする。約50年前に新潟県糸魚川市から農家を移築して、純和風の庄屋造りと太い柱梁(ちゅうりょう)、木組みの重厚な合掌造りの宿として大きく生まれ変わった。

 この宿の何よりの自慢は、緑あふれる自然豊かな山里にあって、北は白馬岳から南は穂高まで北アルプスの峰々や松本平の絶景を得られること。男女別のひのき造り野天風呂や展望大浴場からもそれら絶景を得ることができる。特に日没前、北アルプスの夕焼けを見ながらゆったりと何もかも忘れて漬かれる野天風呂、通称「天空の湯」は最高。そのあかね色の夕空を見られることが、ここの宿名となった。泉質は硫黄塩・炭酸水素塩冷鉱水(中性低張性冷鉱泉)、泉温12・8度(浴用は適温に加温)、神経痛・リウマチ・胃腸痛・婦人病などに効能がある。

 さらにもう一つの自慢は、信州の山菜や野菜をはじめとした旬の地の素材をふんだんに使ったおいしい民芸会席料理をいただけること。食事処は、別棟の合掌造りの温かな照明に包まれた雰囲気のいい民芸食堂「合掌庵」。私が行った日にいただいた夕食は、信州サーモン・大岩魚昆布〆などの造り、和牛鉄板焼き、岩魚塩焼き、そして地粉を使った自慢の手打ちそばなどの地方色豊かな料理の数々であった。

 この宿の近辺には、春から秋にかけてさまざまな花が咲き乱れる鉢伏・高ボッチ高原、厄よけで名高い牛伏寺、五層の天守閣が美しい松本城、そして中部山岳国立公園の代表的な景勝地で穂高連峰を仰ぎ見ることのできる上高地など見どころも多い。信州へ旅したときは、北アルプス展望台のこの宿にぜひ泊まってほしい。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

【所在地】長野県松本市内田崖の湯温泉
【電 話】0263(58)2141
【部屋数】和室25室・洋室5室(定員130人)
【宿泊料金】平日1万950円(税・入湯税・サービス料込み、2人1室)〜、休前日1万3110円(同)〜
【日帰り入浴】営業時間午前11時〜午後7時
【入浴料金】大人700円、小人400円
【定休日】不定休
【交 通】
・JR松本駅からバスで約30分の中信松本病院バス停下車(送迎あり、要予約)
・長野自動車道塩尻ICより車で約15分