来阪catch

ヒロインの感性に賭けた

映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」
監督 石井 裕也
2017年5月28日
「自分が試される映画になった」と話す石井裕也監督=大阪市内
石橋静河(左)と池松壮亮(C)「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

 「舟を編む」などで知られる実力派の石井裕也監督(33)が、最果タヒ(40)の同名人気詩集を映画化した新作「夜空はいつでも最高密度の青空だ」(東京テアトル、リトルモア配給)がなんばパークスシネマ、テアトル梅田で上映されている。「詩集を受け止めて、ヒロインの感性に賭けた」という石井監督に話を聞いた。

 大阪芸大卒業制作で撮った「?きだしにっぽん」(2006年)がPFFアワードグランプリを受賞。劇場映画デビュー作「川の底からこんにちは」(10年)で国内外の映画賞を受賞し、「舟を編む」(13年)で日本アカデミー最優秀作品賞、最優秀監督賞に輝いた。「ぼくたちの家族」(14年)「バンクーバーの朝日」(同)と勢いは続いた。

 「今度はプロデューサーから最果タヒさんの詩集の映画化を勧められて、すぐに読んで約2週間で脚本を書いた。中原中也賞を取った女性詩人の詩を読んですぐに映像が浮かんで、ストーリーもできた。僕がその詩を受け止めてどう感じるかを試されている。都会で出会う若い男女の話で、詩と僕の感覚がそこにミックスされている」

 看護師の美香(石橋静河)は女子寮で暮らしており、空いた夜はガールズバーで働いている。その日々は孤独とむなしさを抱えている。「この女の子は新人の女優にやってもらいたいと願って、22歳の静河が見つかった。ヒロインである彼女の感性に賭けた。それを受け止める慎二役の池松壮亮(26)は、これまで何本か一緒しているが、今度は違うものを出してもらおうと思った」

 生きることにどこか冷めている美香は、病院とガールズバーの両方で遭遇した慎二に「東京に1千万人住んでいるのに、これは奇跡みたい」と言う。慎二は「嫌な予感がするよ」と言うと、「分かる」と美香は答える。「美香は息苦しい空気感を慎二にぶつけるが、慎二はそれをさりげなく受け止めながら、決して絶望的ではない。そんな2人をドキュメントのように追った」

 石橋は俳優の石橋凌と原田美枝子の次女というサラブレッド。ダンスなどの外国留学を経て帰国し、昨年から女優に転向したばかりの新人だ。映画は「PARKSパークス」などに出演しているが主演は今回が初めて。母親の原田は石井監督の「ぼくたちの家族」に出演した間柄で「責任を感じながらも、女優としての未知の部分に期待したし、上手じゃないけど、それもいい味になってヒロインを見事に生きてくれた」

 静河は悩みながらも必死に役になって池松にぶつけ、「彼はその対応に困ったような顔をして静河ちゃんと不思議な雰囲気を作り出していた。都会の夜のゲリラ撮影もスリリングで、タイトルにある『青色』は結局、2人の若さと重なるような気がする」。松田龍平、田中哲司、市川実日子、三浦貴大、野嵜好美らが共演。新しい石井映画になっている。