来阪catch

今を生きる不器用さ

映画「ろくでなし」
主演 大西 信満
2017年8月6日

共感とリアリティー

「今の時代が投影されている映画だと思う」と話す大西信満=大阪・十三の第七藝術劇場
大西信満(左)と渋川清彦(C)Continental Circus Pictures

 映画「キャタピラー」で寺島しのぶ、「さよなら渓谷」で真木よう子と共演し、共に主演女優賞をもたらした俳優として知られる大西信満(しま)(41)主演の新作映画「ろくでなし」(奥田庸介監督)が12日から、大阪・十三の第七藝術劇場で公開される。「今の時代を不器用に生きる男に共感しながら演じた」という演技派に話を聞いた。

 大西の映画デビューは故荒戸源次郎監督の「赤目四十八瀧心中未遂」(2003年)で、主演の寺島が日本アカデミー主演女優賞などを受賞。自身も毎日映画コンクール新人賞などを受賞し高い評価を受けた。以後、大西が相手役を務めた故若松孝二監督の「キャタピラー」で寺島がベルリン国際映画祭主演女優賞を、大森立嗣監督の「さよなら渓谷」で真木がキネマ旬報主演女優賞を受賞した。

 「共演した女優さんが評価されるのはとてもうれしいし、相手役をしてよかったと思う。ただ、いつもそうはいかず、すれ違うこともある。芝居には相性があるし、監督やスタッフとのコミュニケーションがうまくいくかどうかなどの問題もある。それはやってみないと分からない」

 新作は30歳の若手である奥田監督が自身のオリジナル脚本で挑んだアウトロー映画である。刑務所を出所した一真という男が、東京・渋谷の街に戻ってきて、夜のクラブの用心棒に雇われて静かに孤独に生きる姿を描いている。「生きにくい今の時代をどう生きるか。僕自身、主人公に共感しながら、そこにリアリティーを込めて演じた」

 同じクラブの事務所で働く優子(遠藤祐美)と裏路地で出会って、そっと距離が近づく。「そのとき彼女は家に認知症の親を抱えているし、高校生の妹・幸子(上原実矩)もいる。一真は優子を見守る中で、彼女がクラブのオーナーに誘惑されそうになり、それを知った一真はそれまで隠していた暴力性を表に出してしまう。そこからどうなるか…」

 一方で、一真はクラブの社員で裏の仕事をしているやくざのひろし(渋川清彦)と気が合って、彼から「いつまでもこんな稼業をしていてはダメだ」といわれている。それはひろし自身も自覚しているところで、彼が付き合っているのが優子の妹の幸子であるのも変な因縁である。

 「とても脚本が面白い。撮影前に奥田監督とプロデューサーの山本政志さんが脚本を巡ってもめていたので、気になっていたが、こちらは出来た脚本しか読んでいないのでそれに従うだけで、奥田監督の狙いにそって演技するだけだった。一緒に出た渋川さんは個人的な友人でもあり、監督が求めてくるものに応えようと話し、気持ちが楽になった」

 相手役の遠藤がいい存在感を見せている。「一真のまなざしを受けとめる優子には、優しさと同時にたくましさがある。一真は自滅型なので、後半の展開はハラハラするが、女はそんな男を待っていてくれるか。その辺のサスペンスを見てください」