来阪catch

家族の化学反応を

映画「幼な子われらに生まれ」
監督 三島 有紀子
2017年8月13日

不器用さが魅力的に

「家族のドラマのラストは、そのまま続くのか誰にも分からない」と話す三島有紀子監督=大阪市内
浅野忠信(右)と田中麗奈(C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会

 NHK出身でテレビのドキュメンタリー畑から映画に転身し活躍している三島有紀子監督の新作「幼な子われらに生まれ」(ファントム・フィルム配給)が26日から、テアトル梅田、シネマート心斎橋で公開される。家族の葛藤を描いた作品で「生き方の不器用さが魅力的で、その化学反応を見てほしい」という三島監督に話を聞いた。

 三島監督は大阪市出身で神戸女学院大学を卒業後、NHKに入局。「トップランナー」などのドキュメンタリー番組を担当したが、かねて志望していたという映画監督に転身するため2003年に独立しフリーの助監督をやりながら脚本修業に没頭。09年に劇劇映画「刺青〜匂ひ月のごとく〜」で監督デビューし、原田知世・大泉洋主演の「しあわせのパン」(12年)で業界の第一線に躍り出た。

 その後、「ぶどうのなみだ」「繕い裁つ人」「少女」などを発表し、エンタメ志向を持つアート系監督として評価を高めている。そんな三島監督が「しあわせのパン」を撮り終えたころ、「尊敬する脚本家だった荒井晴彦さんに会うことができて、映画の話をしたとき、直木賞作家の重松清さんの原作である『幼な子われら−』の映画化を勧められた」

 荒井といえば寺島しのぶ・大森南朋主演の「ヴァイブレータ」などキネマ旬報脚本賞を通算5度受賞している実力派の長老。「荒井さんが重松さんの原作を読んだのが21年前で、その時、まだ当時新人だった重松さんと映画化の約束をして、これまで実現していないという企画だった」

 主人公のサラリーマン・田中信(浅野忠信)は、4年前に2人の子持ち女性の奈苗(田中麗奈)と再婚し、電車駅から斜行エレベーターで直結した団地(兵庫県西宮市で撮影)で暮らしている。「信には前妻の友佳(寺島しのぶ)がいて、彼女も子どもを連れて別の男と再婚。信は血のつながっていない娘2人と暮らし、血のつながった娘とは離れて暮らしている。自分と同じような40代の大人たちが不器用だけど、魅力的に見えた」

 しかし嫁の奈苗が妊娠し、信は会社で出向リストに載り、長女の薫から「本当の父親に会いたい」と告げられる。薫の実父は遊び人風の沢田(宮藤官九郎)で、奈苗は夫とDVで別れたという経緯がある。「みんな家族の中で息苦しく生きているのに、沢田だけは妻子と別れ自由に暮らしており、娘が会いたがっていると聞いても、『俺は関係ない』と言う。そんな沢田に共感する気持ちもあったが、みんながよくなるにはどうすればいいか。荒井脚本はあるのだけど、撮影現場で、頭を巡らすことになった」

 浅野、田中、寺島、宮藤という演技派の熱演も大きい。「寺島さんのセリフに浅野さんが反応して、アドリブで出て来た言葉に、私は鳥肌が立った。ずっと主人公と一緒に悩んで芝居に臨んでいた浅野さんのそれが一つの回答だった気がした。子役の人も含めて家族を演じた俳優さんたちの化学反応を見てください」