来阪catch

乱の役所、悩む福山

映画 「三度目の殺人」
監督 是枝 裕和
2017年9月16日

見えなくなる真実

「弁護士の仕事をちゃんと描こうと思った」と話す是枝裕和監督=大阪市北区の大阪弁護士会館ビル
福山雅治(左)と役所広司=(C)2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ

 今年のベネチア国際映画祭に出品された話題の法廷サスペンス「三度目の殺人」(東宝+ギャガ配給)が大阪ステーションシティシネマほかで上映されている。「法廷で犯人が混乱し、弁護士が悩む物語になった」という是枝裕和監督(55)に話を聞いた。

 是枝監督はドキュメンタリー出身だが、劇映画「誰も知らない」(2004年)で当時16歳の柳楽優弥にカンヌ国際映画祭最優秀男優賞をもたらし、「そして父になる」(13年)では同映画祭審査員賞ほかを受賞し世界の映画人として名を知られた。今回ベネチアでも大きな評価を受け、ロードショー公開につながった。

 「外国の映画祭で認められるのはうれしい」と照れながら、「今回はこれまでの家族の物語から少し離れた法廷劇で弁護士の仕事をちゃんと描いてみたいと思った。本職の弁護士さんに取材すると『法廷は真実を解明する場所ではない』とおっしゃる。それが面白いと思った。普通の人は『真実を求める場所』と思っているはずだから」。

 主人公の重盛弁護士を演じたのは「そして父になる」に続く是枝作品の福山雅治。「まず福山さんにこの役を受けてもらい、そして犯人役の三隅を役所広司さんにお願いした。役所さんは以前から好きな俳優さんだったが僕の映画と合わないような気がしていて、今回、たまたま年賀状をいただいて『そろそろご一緒に』と書いてあったので、『やろう』となった」

 30年前に一度殺人事件を起こしている三隅が、働いている食品会社の社長殺しで捕まり、それの担当弁護士になるのが重盛。最初会った接見室で「私が殺した。間違いない」と話す三隅を見て重盛は「今度は死刑も仕方がない。うまくいって無期懲役」と覚悟をするが、「裁判は真実を解明する場所ではないし、うまくやろう」というのが本音である。

 「そんな福山さんの重盛弁護士に、役所さんの犯人像をぶつけると面白い。犯人は裁判の進行の過程で、実は社長の奥さん(斉藤由貴)から頼まれて殺したと証言を変え、さらに最後には自分はやってないと無罪を主張する。弁護士は『何が本当だ?』と怒るし、検事、裁判長まで『?』となる。犯人の役所さんは半ば本当に混乱し、弁護士の福山さんは一層悩み始める」

 夫殺しを依頼したといわれた被害者夫人は断固否定するが、そこへ物静かな被害者の一人娘の咲江(広瀬すず)が登場し「犯人の三隅さんはいい人」と擁護し、衝撃的な告白をする展開になる。「すずちゃんのブレない芝居がいい」と言い、接見室での「福山VS役所の対決が見どころ」と笑顔でPR。

 自身で書いた脚本では本物の弁護士に摸擬接見、模擬裁判をやってもらって、具体的な文字に落としていった。画面は好きな黒澤明監督の「天国と地獄」のようなシネマスコープサイズに初挑戦したという。