来阪catch

戦士の切ない生きざま

映画「エルネスト」 
監督 阪本 順治
2017年9月30日

「フレディの青春を知って」

「今の若い世代にフレディの青春を見てほしい」と話す阪本順治監督=大阪市内のホテル
チェ・ゲバラ(左)とフレディのオダギリジョー=(C)2017”ERNESTO”FILM PARTNERS.

 革命戦士としてチェ・ゲバラと一緒に闘い25歳で散ったボリビア日系2世を主人公にした映画「エルネスト」(キノフィルムズ/木下グループ配給)が10月6日から、TOHOシネマズ梅田・同なんばで公開される。キューバと合作で「革命戦士の切ない生きざまを描いた青春映画になった」という阪本順治監督に話を聞いた。

 大阪・堺市出身の阪本監督は赤井英和主演の「どついたるねん」(1989年)で監督デビュー。藤山直美主演の「顔」(2000年)で日本アカデミー賞最優賞監督賞など多くの映画賞を独占した。昨年直美主演の「団地」を発表したのも記憶に新しい。「僕の主人公は誰もが知っている人でなく、いつも路地裏の人。いわばゲリラです」

 新作の主人公はボリビア日系2世のフレディ前村ウルタード(オダギリジョー)で実在した人物。キューバ革命で知られるゲバラ(ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ)と一緒に闘い、25歳の時ボリビア戦線で彼と共に散った。「父親が日本人で母親がボリビア人。革命戦士として彼は決して裏切らない人という記録がキューバのゲバラ研究所に残っている。彼のことを知り、その生き方を取材して映画にしたいと思った」

 フレディは祖国では豊かな家の子で、将来は医師を志し、20歳の時にキューバの大学に入学する。「キューバ危機の後、ゲバラが大学を訪れた時、フレディは彼に質問する。『あなたの絶対的自信はどこから?』と。ゲバラは『自信ではなく、怒っているんだ』と答える。ゲバラは日本の広島を訪問し、『どうして日本人は怒らないのか?』と発言している」

 映画のストーリーは家族がフレディのことを書いた「革命の侍」を参考にしているが「脚本は関係者の多くに取材してリアルな構成にした。それでも現地で約2カ月撮影しながら、ゴリゴリで書いた脚本が少しずつ壊されていくのが分かった。それが映画を壊すのではなく、面白いものにしてくれるような気がして、しんどいけど充実していた」

 フレディを演じたオダギリジョーは撮影前にスペイン語(ボリビアの方言)を猛勉強して臨んだ。「彼はこれまでいろんな外国映画に出ているし、心配はなかった。最初の撮影時に言葉だけでなく、フレディに成りきっていたのに驚いた。彼とは3本目の映画だが、今度は主役だから『ドロ船』に乗ってもらった(笑)。未知なる世界を一緒に…」

 若き日のゲバラとフレディは共に裕福な家に育って医師を目指した。その中で貧乏な人たちを救おうとした。お互いに同志であると同時に、原点は「2人は医師だった」ということが大きい。「オダギリジョーにも同じようなにおいを感じた。よくやってくれた。僕は(10月1日で)還暦を迎えるが、30歳で映画監督になり、ここで初めて青春映画を撮ったような気がする。観客の若い人にフレディの青春を知ってほしいと思う」