来阪catch

青春は矛盾の時間

映画「きみの鳥はうたえる」
監督 三宅 唱
2018年9月22日

男2人と女1人の関係

「地続きで普遍的な青春映画になった」と話す三宅唱監督=大阪市中央区のシネマート心斎橋
ヒロインの石橋静河(C)HAKODATE CINEMA IRIS

 北海道出身の佐藤泰志の同名小説を映画化した「きみの鳥はうたえる」(コピアポア・フィルム、函館シネマアイリス配給)がテアトル梅田、シネマート心斎橋で上映されている。男2人と女1人のラブストーリーで「青春は矛盾の時間。かけがえのない時間を追いかけた」という三宅唱監督(34)に話を聞いた。

 佐藤泰志は函館出身の小説家で芥川賞候補に5回選ばれるが落選し、1990年、41歳のときに自死した不遇な作家。2010年に函館の有志によって佐藤原作の「海炭市叙景」が映画化されヒットしたことで、小説再評価の機運が高まり「そこのみにて光輝く」(13年)「オーバー・フェンス」(16年)と同名原作が映画になった。

 「佐藤原作を映画化したのは大阪芸大出身の3人の若手監督、熊切和嘉、呉美保、山下敦弘さんで、僕はプロデューサーの菅原和博さん(函館アイリスシネマ)から、同じ北海道(札幌市)出身で、若手ということで声をかけてもらった。佐藤さんが31歳のときに書いた作品で、今の僕に近いので少し気が楽になった」

 函館郊外の本屋に勤める30歳くらいの僕(柄本佑)が主人公で、友人で失業中の静雄(染谷将太)と小さなアパートに同居し、くすぶった生活をしている。そこに同じ本屋で働く佐知子(石橋静河)が入って来て、僕といい仲になりつつ、3人の間に微妙な恋愛感情が芽生え始める。「男2人と女1人の恋物語は青春映画の王道。その意味では普遍的なテーマがあり、地続きなテーマに共感しながら撮影に入れた」

 原作は東京が舞台だが、「函館シリーズとして函館に場所を移し、原作の時代ではなく、現代の話として」撮った。「柄本さん、染谷さんの2人にもそれを話し、函館の裏夜景を背景にした現代の青春物語として演じてもらった。ヒロインの石橋さんにはミュージカルではないが、歌をうたってもらうことと、踊ってもらうことをお願いした」

 佐藤原作は全体的に暗い内容で、函館の沈んだ静かな風景に重なっている。「暗いけれど、そこには明るさもある。3人の恋愛の時間はそのときだけは、幸せな時間でもある。と同時にまた取り返しがつかない時間でもある。二度と起きないことだからそれはかけがえのない時間。それを誠実に描けばその先に希望が見えるかもしれない」

 ヒロインの石橋は石橋凌と原田美枝子の間の次女で、昨年「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」で多くの新人賞を獲得して注目された。「彼女の歌と踊りは映画の秘密兵器。とにかくノビノビした子で、柄本、染谷の男2人をあおってくれている。3人のすがすがしさも見てほしい」

 三宅監督は一橋大社会学部卒で、映画美学校でも学んだ。長編「やくたたず」(10年)でデビューし、今作は「Playback」(12年)に続く劇場映画3本目に当たる。