連載・特集

全員参加型の就労支援

 就労支援施設と企業が連携し、意志があっても就職できない人たちのカウンセリングから職場体験まで、必要に応じた個別支援を一体的に行う試みが大阪で進められている。都心部の3カ所で、異なる機能をもたせた利用無料の“居場所”を開設。支援体制の「大阪モデル」を構築しようと試行錯誤を続ける現場を取材した。

「無目的の場所」が効果

2010年8月17日

当事者目線でつながり

船場センタービル内のスペース「夢船場」=大阪市中央区

■「排除がない」

 「ちゃんとして、ではなく具体的に示してほしい」−。脳機能の障害で、コミュニケーションを取りにくいなどの特徴がある発達障害に対し、対応方法が次々と示される。

 船場センタービル(大阪市中央区)内の就労支援スペース「夢船場」で、支援者が集まって開く勉強会。説明する山田宏さん(30)=仮名=も発達障害と診断され、未就業状態だった一人だ。

 厚生労働省の調査(2006年)では、支援施設を利用した経験があるニートの若者のうち23%は発達障害かその疑いがあった。理解を深めれば支援の際に役立つ。

 同市内の3カ所に求職者の居場所をつくって就労支援する事業「REワークトゥギャザー夢船場」では、事業に合わせて採用した12人のうちほとんどが働きたくても働けなかった経験のある人。さまざまな理由で引きこもりやニート状態だった人もいる。

 各施設のパイプ役を務める大阪府若者サポートステーションの槙邦彦コーディネーター(41)は、当事者経験のある人が支援者にまわる意義について「利用者と同じ目線で悩み、理屈抜きで親しみやつながりが生まれる」と指摘する。「そこには“排除”もない」。

■「心底ありがい」

 夢船場の居場所を自立への足場にした仲間和也さん(35)は「落ち着ける場所だった」と振り返る。

 離婚を機にアルコール依存症にかかり、野宿生活を送っていた。「妻や子供たちを幸せにできなかった」と悔やみ、自殺も図った。助けてほしいときに面倒をみてくれる場所はこれまでなかった。

 夢船場では、ただ横になることも許され、当事者意識があるからこそ生み出される「空気感があった」という。支援者が用意するカップラーメンで空腹を満たしたとき「心底ありがたかった」。

 サポーターの山田さんは「自分もまだまだ精神的に強くないが、働きたくても働けない人の気持ちが分かる。利用者を守るスペースでありたい」と決意を示す。

■効率性求めず

 自由に過ごせる居場所は、利用者の自己分析にも役立っている。8月に介護職の正規採用につながった男性Sさん(39)は、雑談の中で「自分の良いところと悪いところが分かるようになった」と話す。緊張すると早口になる点も気付かされ、注意するようになった。

 槙コーディネーターは、不登校児を受け入れる高校の教諭や障害者支援で活躍。民間住宅を改修し、生きづらさのある人が自由に利用できるスペースの開設などにも尽力し、「効率性を求めず、ゆったりとした時間を過ごせる『無目的の場所』の重要性を感じてきた」という。

 その実践がいま、就労支援で成果を見せつつある。


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