日曜インタビュー

子どもにとって一番いいことを

ドキュメンタリー映画
「みんなの学校」
監督 真鍋俊永
2015年3月1日

一緒に成長する時間

「こんな学校が増えてほしい」と話す真鍋俊永監督=大阪市北区の関西テレビ
「みんなの学校」の一場面=(C)関西テレビ放送

 大阪市住吉区にある公立大空小学校の生徒と先生、そして地域が一体になった教育現場の1年間を追ったドキュメント映画「みんなの学校」(関西テレビ放送製作、東風配給)が7日から大阪・十三の第七藝術劇場で公開される。「子どもにとって一番いいこと」を通して、「みんな一緒に成長する」ことの大事さを見てもらいたいと、真鍋俊永監督は訴えている。

■ニュースから

 −報道カメラマン出身で、映画は初監督ですね。

 阪神大震災などニュースやドキュメンタリーなどの撮影を担当。その後報道で夕方のニュース番組をやっていた。大空小学校の話は1時間のテレビドキュメント番組で取り上げ、反響が大きかったとのことで映画版を作ることになった。もともとは10分間のニュースからスタートした。

 −いつごろから学校の現場に興味があったのか。

 高校の退学者について取材した経験があったくらいだが、大空小学校のドキュメントの企画は同じ報道部の迫川緑、僕の奥さんが学校取材の道を作ってくれたのを受けて2012年4月から1年間カメラを回した。

 −開校7年目の小学校で女性校長の新学期のあいさつから始まる。

 同じ校区にある南住吉小学校の児童数が増えて、大空小学校ができた。12年の生徒数は220人で、特別支援の対象となるのは30人を超えていたが、すべての子どもたちは同じ教室で学ぶ。「不登校ゼロ」を目指し、児童と教職員だけでなく保護者や地域の人も一緒になって誰もが通い続けることができる学校を作り上げた。

■何があったん?

 −木村泰子校長の生徒に寄り添った姿勢が気持ちいい。

 先生は「子どもにとって一番いいこと」を考え、すること。マニュアルではなく、今起こっていることに対して「今、何がいい?」と考えること。「ルールは変わってもいい」し、悪いことをした生徒を「やり直しの部屋」に呼んで「何があったん?」と生徒の話を聞き、ジャッジをする。

 −発達障害がある子や、学校を飛び出す子もいるが。

 よその小学校で特別支援学級に通っていた4年生のセイシロウ君が、以前は学校に出ても2時間が限界で外へ出ていたが、だんだん出なくなっていくし、活発なマサキ君が暴力を振るったことで先生に怒られ、相手に謝るように言われて一度謝るが、すぐにまた暴力を振るう。彼がクラスの発表会で「暴力を振るわないようにします」と涙を流す。木村校長は「ホンマに分かっているんかいな」と言いながらほほ笑む。

 −木村校長だけでなく、先生が全生徒を見守っている。

 生徒たちを差別しない、一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」の実践と言うのが木村校長の方針。特に若い先生に対していろいろアドバイスし、ベテランの先生や、父兄、地域のボランティアの人々とうまくコミュニケーションをとっている。それは、開校して7年間に木村校長ら先生が率先してやった「みんなの学校」作りの成果だと思う。

■数字で判断しない

 −いわゆる学力主義の「平均点」はいらないと。

 学力調査が全く役に立たないと言っているのではない。できないよりできた方がいい。多くの大人は「数字」を、人を見る判断材料にしてしまう。木村校長は「学力より大事な何かがある」と考えておられるような気がする。

 −卒業式から新学期を迎えるまでの子どもの成長が著しい。

 1年間撮影しながら僕自身がいろいろ考えさせられ、学ばされた。その後、編集作業に入って、さらに「あの時は分かっていなかった」ということがいくつもあって、映画を完成させて気付いたこともあった。子どもたちと先生、地域の人たちみんなの学校の中で、僕も一緒に成長できていたらうれしい。

 −木村校長の人間的魅力も大きい。

 とても気さくでいい人。最後に「なぜ子どもたちは学校に来られるようになったか」を問うと、開校時のあるエピソードを披露してくださった。その話はぜひ映画で見てください。

 まなべ・としなが 1969年生まれ。徳島県出身。91年に関西テレビ入社。14年間の報道カメラマンを経て報道部へ。府政キャップなどからニュース番組へ。撮影した作品は「人生はこれからだ〜93歳の高校生」「神戸六甲に吹く風〜阪神大震災から5年」など多数。「みんなの学校」テレビ版・映画版初演出、初監督。次作は「貧困」をテーマに考えている。