日曜インタビュー

菅田×池松 ガチ会話劇

映画「セトウツミ」
監督 大森 立嗣
2016年6月26日

漂う 大阪の匂い

「少し大人の映画になったかな」と話す大森立嗣監督=大阪市西区の新通ビル
菅田将暉(右)と池松壮亮=(C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

 大阪の漫画家、此元和津也の同名原作を映画化した「セトウツミ」(ブロードメディア・スタジオ配給)が7月2日から、なんばパークスシネマとテアトル梅田で公開される。「原作と同じ場所で撮影し、菅田将暉と池松壮亮の2人にガチの芝居でやってもらった」という大森立嗣監督に話を聞いた。

■初の大阪ロケ

 −大阪で映画を撮るのは初めて?

 荒戸源次郎監督の「赤目四十八瀧心中未遂」にスタッフとして参加した時、兵庫県尼崎市や三重県の赤目四十八滝に行って撮影したが大阪は初めて。プロデューサーからいただいた企画だったが、原作を読んで面白いと思ったし、菅田将暉、池松壮亮という人気スターの共演で、映画も面白くなると思った。

 −全編 大阪ロケで、大阪弁の会話劇。

 大阪の高校に通う2年生の男の子、瀬戸小吉(菅田)と内海想(池松)が、堺の町の川辺の小さな階段に座って話をしているだけの話。瀬戸と内海で「セトウツミ」。原作者は「モデルは2人とも自分で、普段は瀬戸だが、自意識をこじらせると 内海になる」とおっしゃっている。大阪の漫才みたいなお笑いもあるが、僕は2人の俳優に「ガチの芝居でやってほしい」とお願いした。

 −一見、漫才的なおかしさもあるが、どこかリアルな生活感がある。

 台本はあるけど、その時その時で相手が何を言っているかを聞いて、その都度考えて反応してほしいと頼んだ。アドリブがあってもいいし、脱線してもいいが、漫才ではなく芝居であってほしいと。2人はセリフを全部覚えてきた上で、そこに新鮮な会話を加えてくれた。菅田君は大阪出身だから、さすがに大阪弁が上手で、池松君に突っかかっていく。池松君は福岡県出身でハンディがあるが、方言指導の人に習って、頑張ってくれた。

■裏ストーリーも

 −大阪弁の面白さ、人情がよく出ている。

 原作がそうであるし、映画もそれを外したら何もならない。ボケと突っ込みも入っているが、高校生の青春映画であるということと同時に、もう少し大人の映画になったような気がする。例えば、瀬戸が好きな女の子の樫村一期(中条あやみ)が、実は内海が好きであるという話とか、瀬戸の家庭の祖父が徘徊(はいかい)したり、両親に離婚の話があることなどが裏ストーリーとしてあり、少し切ない部分もある。

 −その辺は人間ドラマにこだわる大森映画になっている。

 映画は何話かのエピソードをつないだものになっており、それを全体の1本の作品として見せるために音楽や撮影方法などが重要なファクターになっている。その辺はスタッフに助けられたし、俳優陣の頑張りがあって面白い作品になったと思う。撮影日数は10日間で、場所が固定されていたのでゆとりはあった。

 −大人の我々は「あんな時代があった」と懐かしくなる。

 瀬戸か内海かは別にしても、同じようなこと考えていたような気がするし、悩みであって悩みでないようなことで、うじうじしていたし、逆に突っ張っていたことなども思い出される。菅田君とヒロインの中条君が大阪出身で、カメラも「味園ユニバース」の高木風太君が担当しており、大阪の匂いがよく出たような気がする。

 −菅田・池松は次回作でも共演するとか。

 バディ映画は僕も松田龍平と瑛太で「まほろ駅前」シリーズを2本撮っているので好き。菅田・池松コンビともまたやってみたい。それと弟の大森南朋の主演ものも考えているし、「ぼっちゃん」のようなアウトローものもまたやりたい。幸い、青春映画を撮らせてもらって精神的、肉体的にもリフレッシュしたので、もうひと頑張りします(笑)。

 おおもり・たつし
 1970年生まれ。東京都出身。俳優として舞台、映画に出演後、荒戸源次郎監督の「赤目四十八瀧心中未遂」(2003年)にスタッフとして参加。「ゲルマニウムの夜」(05年)で監督デビュー。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(10年)で日本映画監督協会新人賞。「まほろ駅前多田便利軒」「ぼっちゃん」を経て「さよなら渓谷」でモスクワ国際映画祭審査員特別賞。父親に麿赤児、弟に大森南朋。