日曜インタビュー

底に映画愛がある

映画「下衆の愛」
主演  渋川 清彦
製作 アダム・トレル
2016年7月17日

みそラーメンのように

「面白い映画にチャレンジした」と話す渋川清彦(右)とアダム・トレル=大阪・十三の第七藝術劇場
「下衆の愛」の渋川清彦(右)=(C)Third Window Films

 日本のインディーズ映画の製作現場を舞台に中年映画監督のぶざまな生き方と純愛を描いた「下衆の愛」(サード・ウィンドウ・フィルムズ配給、内田英治監督)が30日から大阪・十三の第七藝術劇場で公開される。「底に映画愛がある」という主演の渋川清彦と製作のアダム・トレルに話を聞いた。

■映画監督の役

 −渋川さんは映画出演作が多くて、よく見かける。

 渋川 映画は豊田利晃監督の「ポルノスター」でデビューし、豊田作品全部と、三池崇史監督の「テラフォーマーズ」までで何本になるかな。今回はこれまで2本付き合った内田監督と、僕が主演した「そして泥船が行く」を海外に紹介して下さったアダム・トレルさんが単独でプロデューサーなので喜んで参加した。「お盆の弟」に続いて売れない映画監督の役。

 トレル 僕はイギリス人だが11年前から日本に来て、日本映画を海外に紹介する仕事をしている。園子温監督の「愛のむきだし」を紹介するうちに、原発を扱った彼の「希望の国」のプロデュースにも参加した。ポリシーは「お金がなくてもいい映画はできる」。「福福莊の福ちゃん」は海外で行われているファンタジア国際映画祭で大島美幸(森三中)が最優秀女優賞をもらった。日本映画では「愛のむきだし」の満島ひかり以来5年ぶりの快挙だった。

 −その2人が「下衆の愛」で何を狙った?

 トレル リオデジャネイロ出身の内田監督が映画の撮影現場で起きるドラマを面白く作るというので乗った。「下衆」という言葉には、お金はない貧乏人だが、作る映画は面白いという意味が逆説的に込められている。渋川さんは元モデルで本当はカッコいい人だが、映画ではよくどこか路線から外れたアウトローを演じており、それがはまっている。僕が日本で好きなみそラーメンのような味がある。

■周囲にいる人

 渋川 みそラーメンは嫌いじゃないが、味がある映画は作ってみたいとは思った(笑)。売れない映画監督の役は2回目で、モデルになる人は周囲にたくさんいるので、今回は誰のまねをしようかと思った。もちろん、脚本に「ゲス監督」のキャラクターは書かれているので、それをどう演じるか。しかし、40歳近くなってブラブラしている監督って、あまりカッコよくない。

 トレル でも、内田監督はゲス監督のイメージは渋川さんに合わせてあて書きしているところがあるので、ぴったりだった。僕は日本の三島由紀夫が好きで、彼が作った映画も見たし、キャンディーズのスーちゃんも大好きだった。だから「映画は面白ければいい」と思っている。「下衆の愛」は女性たちがみんなよくて、熱のある映画になっている。

 −低予算映画の撮影現場の悲哀がある。

 渋川 僕がやっている監督は、才能があるかないか分からないが、まだ諦めていないことだけは伝わってくる。お金はないけど「おれらが映画をよくしていかないで誰が…」とたんかをきるプロデューサーのでんでんさんがカッコいい。いいかげんなんだけど、どこかで突っ張って闘っている。あんなプロデューサーは実際にたくさんいる。

 トレル 日本映画は今、世界の水準でいえば遅れている。昔の黒澤明や小津安二郎らがいた頃に比べると、外国で名が通っているのは園子温、是枝裕和、三池崇史くらいで、層が薄い。「下衆の愛」もそうだが、世界に通用する映画を作ってほしい。映画を作る人の「映画愛」は共通のもので、それがどんな低予算映画にも流れている。そんな映画を作りたい。

 渋川 俳優は自分が演じている人物に共感しながら演じられるときは幸せを感じる。今回の役も、内田監督はアドリブもOKで自由にやらせてくれた。それが映画の厚みになっていればうれしい。三池監督の「極道大戦争」や、武正晴監督の「百円の恋」などもそうだった。「下衆の愛」をたくさんの人に見てもらいたい。

 あだむ・とれる 33歳。11年前にイギリスから日本に来て「告白」「悪人」など70作品以上を海外に紹介。園子温監督の「希望の国」、藤田容介監督の「福福莊の福ちゃん」などをプロデュース。EU離脱は深刻と祖国を憂えている。
 しぶかわ・きよひこ 1974年生まれ。群馬県渋川市出身。バンドでドラムを目指すが19歳でモデルにスカウトされ「KEE」の名でファッションモデルとして活躍。98年「ポルノスター」で映画デビュー。映画、ドラマ出演多数の実力派。