旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

四国徳島 祖谷のかずら橋

2018年1月8日
秘境祖谷にある「かずら橋」。自然に溶け込んだ風情が魅力的だったのだが…

 徳島への仕事を利用して二十数年ぶりに祖谷大歩危小歩危、かずら橋を訪れてみた。平家一族の裏話を秘める、秘境祖谷にある“かずら橋”。長さ45メートル、幅2メートル、水面上14メートル。昔は深山渓谷地帯の唯一の交通施設であった。約800年前に源平の戦いに敗れた平家一族が、剣山、平家の馬場での訓練に通うために架けられたといわれている。

 確かに以前訪れた際は、秘境といわれるゆえんにも納得できるものであった。静かで訪れる人の数もわずかで、自然に溶け込んだ風情が魅力的であった。ごく自然に風景を見て、橋を渡りまた戻って来る。それだけで秘境を十分に味わうことができたはず。

 しかし、もう今は秘境と呼ぶにはほど遠い感がある。大型駐車場が整備され当然に有料であり、橋の通行料も有料になり、500円は高い。大型バスの乗り入れも可能になり、“かずら橋銀座”の様相を呈しているのが何とも寂しい。写真を撮るにも、インバウンド観光の外国人に押されながらの状態にへきえきする。以前のひっそり感は皆無である。

 この後、祖谷温泉ホテルへ寄ってケーブルカーで川辺に降り、久しぶりに天空露天風呂に漬かる予定もキャンセルし、いそいそと帰途についた。外国からの観光客も大歓迎ではあるが、現在の観光の在り方に疑問を感じるのは私だけだろうか?

 私たちもアウトバウンドで海外へ行った際の観光地での行動は好感を持たれているだろうか。難しい問題ではあるが、観光、歴史、文化遺産、自然美と、私たちはその場所に応じた礼儀を心掛けて楽しまなければと考えさせられた旅だった。

 (ホテル・旅館プロデューサー)