旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

勇気を出して温泉情報開示を

2018年9月24日
どんな温泉に漬かっているのかが分かれば、さらにお湯を楽しめるはず

 昔は温泉といえば、疑いもなく温泉だった。源泉はどこで、こんな効能があるという紙が貼ってある。「検査したのはずいぶん前だな」なんて思いながら、それ以上の詮索はせず、どっぷりとお湯に漬かって楽しむ。筆者は長年そうやって温泉に入ってきた。

 最近の諸事情はそんな簡単なものではないらしい。先日も温泉旅館のロビーで予約の電話の会話を耳にした。「はい、当館は天然温泉でございます。内風呂は循環ろ過をしておりますが、露天風呂は掛け流しです。泉質は単純泉です」とお客さまに応えている。ずいぶん細かいことを聞く人がいるもんですねと声を掛けると、詳しくお聞きになる方が増えましたと。

 温泉でないのに温泉だとウソをつくのはよくない。これは誰が考えてもわかる。中国産なのに北海道産のそば粉だと言ったり、カナダ産の小麦粉を国産だと言ったりする人たちがいるようだからこの点は正しくしてほしい。それと同様に、どういう温泉なのかを教えてくれることはいいことだ。お客としてみれば、わざわざ入りに来たのだから、自分がどんな温泉に漬かっているのかを知れば、ありがたみが増すというものだ。

 問題はいつまでたっても表示の基準が決まらないこと。天然温泉、加水加温なし、掛け流しでないとお客が来なくなると思っているのかもしれないが、世の中そんなマニアックな人だけではない。掛け流しなんて言葉も知らない人もいっぱいいる。お客は温泉の何を知りたいのかを調査した上で、早く温泉情報開示の基準を作ってほしいものだ。

 (ホテル・旅館プロデューサー)