旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

地産地消、でも「売る技術」を

2018年10月8日
地産地消はお客さまに納得してもらい、喜んでもらうことが大切

 地産地消というかけ声は、どんな観光地でも聞くことのできる言葉だが、内実はどうだろう? 先日も観光地の未来ビジョンの委員会にて、そこでも旅館業の魅力ある食の創造がテーマになった。当然、地産地消の旗印をここでも挙げようとしている。

 この観光地はみかんの栽培地があって、旅館業者もそれに目をつけて、朝食用のジュースをそこから調達して「朝採れみかんジュース」として地域ブランドにしようとした。最初は賛同者も多く、軌道に乗るかと思われたが、1年もたたないうちに「メーカーのジュースのほうがリットル当たり3円、4円安いのでとすぐに後戻り、数十軒で始めた運動も今じゃ3軒のみ」。現実とはこんなものか、目の前のコストには勝てないということか。

 せっかく地域の農家さんとの連携にも、同業者の目先のコストで話を壊してしまうのが残念に思えて仕方ない。要するに、仕入れが高くても、その特徴をきちんと訴えて、お客さまに納得して買ってもらって喜んでいただくことが大事であると思う。

 商売の要諦は「利は売りにあり」にあるのでは? 「利は元にあり」ではないと思う。3円、4円安いが経営ではないだろう。3円、4円高い仕入れだが、それをきちんと売価に結び付けて売って納得してもらう技術、それが「売り」ということだろう。

 お店良し、お客良し、取引先良しで三方一両得になる。観光行政もことあるごとに、地産地消を唱えるのはいいが、価値をつけて物を売る技術を旅館ホテル、土産屋さんなどに要求するべきだ。そういったマインドがないと、産地偽装などの問題がなくならないのでは。旅館、ホテルも地産地消を推奨するなら、かなりきちんとやり切るべきだ。偽装が発覚した途端、企業が頓死する時代だ。(ホテル・旅館プロデューサー)