亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

大阪市平野区

2018年1月8日

昔話の定番、狐・美女・大根

「なんか、ええ匂いがするけど…」イラスト(C)合間太郎

 今回は狐(キツネ)にまつわる昔話の定番のようなお話。酒屋の主人が知人の婚礼に呼ばれてほろ酔い気分での帰り道、手にはおみやげの折り詰めをさげ、ちどり足で歩いている。

 見ると夜中だというのにきれいな娘がこちらを見て、「どこまで行きなさる」と声をかけてくる。「わしの家は平野や」と言うと娘は「よかったぁ、私も平野やねん。夜中やし、いっしょに帰ってよ」と言う。色っぽくて若い娘とあっては断るはずもない。

 だが、この頃のうわさで、このあたりに人をだます狐が出るというのを思い出し、この女かも、と思いつつ歩き出した。

 娘が「なんか、ええ匂いがするけど、これ何」と聞いてくる。もちろん、手にさげた折り詰めのことである。あつかましくも手を伸ばしてきたので、「このど狐め」と娘をドンと突き飛ばした。娘はもんどり打って木の根に頭をしたたかに打ち、ひと声「コ〜ン」と鳴いてバタンキュー。

 「ざまあみさらせ、狐のぶんざいで」と言いつつ見ると、着物の裾から狐の尻尾がはみ出ている。これはええみやげができたと、尻尾をつかんでひきずりながら平野に帰った。

 むかえに出た女房に「ほら、化け狐や。毛皮が高うに売れるぞ」と言いながら渡したら、女房は笑いころげる。よく見ると畑の大根だ。折り詰めもどこへやら。

 これは平野に伝わる、狐にいっぱい食わされた男の話。

 落語の「七度狐」のサゲにも大根をひき抜くくだりがあり、昔話にも狐の尻尾をひっぱったら大根がぬけた、というのがよくある。どこにでもある話なので、平野のおばあちゃんあたりが子どもらに、どこからか聞いた話をアレンジしたのかも。

 狐、美女、大根は三題噺(ばなし)のようである。

 (日本妖怪研究所所長)