岡力の「のぞき見雑記帳」

ピン芸人 原田おさむさん

2017年4月3日

自伝エッセーで作家デビュー

著書を手にする原田おさむさん

 関西の地で信念を貫き懸命に頑張る演芸人に対し功績をたたえる「大阪ともしび大賞」。2013年より年に1回、私の独断で選考し発表している。

 その記念すべき1回目の受賞者であるピン芸人の原田おさむさんから久しぶりに連絡があった。聞けば大手出版社が企画するコンテストに自伝エッセーを投稿したところ受賞。このたび、書籍化され作家デビューするとの事だった。

 原田さんは、高校を卒業してお笑いの世界に入った。当時は、ピン芸人が珍しく早々にデビュー。関西で深夜に放送されていたネタ番組に出演し人気を博す。しかし、ギャラは安く厳しい生活環境だった。そんな時、アルバイト先として選んだのが高給でシフトが組みやすかったパチンコ店だった。それがいまだに続く地獄の1丁目だったかも知れないと振り返るところから物語が始まる。

 タイトルは「ピン芸人ですが、パチンコ店員やっています」。簡潔に本の中身を全て言い表している…。しかし、手に取って読んでほしい。パチンコ店で起こる悲劇、喜劇、そして書いてはいけないような裏話が赤裸々につづられている。

 よくタレントが日常のよもやま話をエッセー本として出版しているが、そんな生やさしいものではない。日々の業務において次々に生じるトラブル。実際に体験した者でしか書けない鬼気迫るリアリティーがある。まるでハードボイルド小説を読んでいるかのようだ。そうかと思えば物語の中盤では奥さんとのなれそめ話。まさかのラブストーリーに突入していく。

 芸人、パチンコ定員としてデビュー22周年、その両方のわらじを履き続けたからこそ誕生した1冊である。書籍のプロフィル欄には「第1回大阪ともしび大賞受賞」と記載されていた。大阪の「ともしび」が「あかり」となって世の中に照らされた。

(コラムニスト)
 ■小説投稿サイト「カクヨム」エッセイ・実話・実用作品コンテスト受賞作 「ピン芸人ですが、パチンコ店員やっています」(著者・原田おさむ、KADOKAWA)