岡力の「のぞき見雑記帳」

現存する街角の昭和遺産

2017年9月4日

懐かしの電動遊具をもとめて

昭和の時代、商店街は遊具であふれていた

 スーパー銭湯で乗馬フィットネス機器にまたがる中年男性を見て「アレ」を思い出した。動物や乗り物を模しコインを投入すると上下に動く「アレ」。正式名称を調べたところ電動遊具、電動ムーバー、電動ライドとさまざま。呼び名はともかく昭和生まれにはなじみの乗り物である。私が頻繁に乗車したのは薬店の前にあったゾウのマスコットタイプだ。

 この子供心をわしづかみにする画期的なシステムを開発したのが大正時代、大阪で医療器具の卸販売店を営んでいた遠藤嘉一氏。後に「遊園地の父」と呼ばれ、アミューズメント業界に多大な功績を残した人物である。もともと衛生器具やお菓子の自動販売機を考案。その後、昭和初期に海外で人気を博した電動遊具にヒントを得て開発したと言われている。

 「どうしても年代物のアレに乗ってみたい」と熱望していたところ、偶然にも知人が投稿したフェイスブックで発見。JR千里丘駅から徒歩数分、電気のよろず相談室として地元で愛されている「竹原電器商会」の店頭にそれはあった。

 愛らしいニッパー(犬)が宇宙ロケットの先端に搭乗する日本ビクタータイプ。今から50年前にメーカーから買い取り設置した。そして今なお、元気に可動しながら稼働している。ちなみにこちらは日本国内で数台しか現存しない幻の逸品である。常に全国の愛好家から売ってほしいと言われているが「現役の看板」としての役割がありお断りしている。

 早速、乗ろうとしたが重量制限である15キログラムにひっかかり断念。桁違いに成長した自分を悔やむ。仕方なく無人で10円を投入しスタート。重厚感のある音を立て上下にグラインドを始める。久々に動く姿を見たが意外に動きが激しい…。「昔と違って今の子供さんは、びっくりして泣く子もいますよ」と笑う店主。さすが昭和仕様である。

 激動の時代を駆け抜け今日も宇宙に向かって前進するニッパー。わずか1分間の飛行であったが歳を重ねたせいか目頭が熱くなった。

  (コラムニスト)