コラム

[潮騒] 9月19日(日)

2021年9月19日

 本や雑誌を読んでいると、時々自分のことを指摘されたと感じる瞬間がある◆「知識には『生きた知識』と『死んだ知識』があります。前者は、『必要なときにすぐ取り出して使える知識』、後者は『ため込まれても使えない知識』です」と説くのは慶應義塾大の今井むつみ教授。「知識は自分の持っている体系の中に統合し、いろんな場面で使われなければ、生きた知識にならない」という箇所を読んだとき、まさに自分のことだと感じた◆記者という職業柄、文章に接する機会は多い。新聞や雑誌の記事はもちろん、行政の文書や裁判の記録を見なければならないこともあるし、怪文書の類いが送られてくることもある。記者生活の中で断片的な知識はいやというほどため込んできた◆しかし、その中に「生きた知識」はどれほど残っただろうか。そもそも自分に体系というものがあるのか、という点からして心もとない。統合すべき体系がなければいろんな場面で使えるはずもない。日々、行政のトップや経済人の発言から目を引くものを拾うだけでは「死んだ知識」にしかならないだろう◆読書の秋を機に、情報をつまみ食いするような読み方を改め、体系を意識しながら、かつてのように楽しんで読もうと思う。(木)


サイト内検索