岡力の「のぞき見雑記帳」

コミュニケーションの大切さ伝えたい

2020年3月17日

デフバスケットボール男子日本代表監督 上田頼飛さん

スポーツにとどまらず社会問題の解決にも取り組む上田監督

 「言葉は聞く事よりも感じること」。そう語るのは、真言宗山階派・僧侶の傍らデフバスケットボール男子日本代表監督を務める上田頼飛さんだ。大阪市出身、小学5年の時にバスケットボールと出合う。地元の強豪・淀川工科高校を経て大阪体育大学で活躍。卒業後は、プレーヤーとしてコートに立ちながら西成高校の監督を務めた。

 20歳の頃に出合ったのが聴覚障害者を対象とした「デフバスケットボール」。ハンディを抱える選手に寄り添い指導をするようになった。ルールは通常の競技と同じだが、公式ブザーに対してフラッグマンと呼ばれる審判が旗を振りジャッジの伝達がされる。試合中、補聴器の装用は禁止されている。

 一口に聴覚障害と言っても症状はそれぞれ異なり、意思疎通は困難を極める。とくに背後からの呼びかけに対して反応できないケースがある。その際は、床を強く蹴り振動を出すなどさまざまなケースを想定してサインを事前に決め対応している。また監督からの指示は手話通訳や作戦ボードを用いるなど数種類ある手段から試合ごとに方法を絞り臨んでいる。

 監督就任後、チームは躍進を続ける。2018年には「U21世界大会」銀メダル、「アジア太平洋クラブカップ」では金メダルを獲得。現在、オリンピックイヤーの翌年に開催される「デフリンピック」出場を目指した戦いが始まっている。

 また「支援される前に支援する」をスローガンに、選手自身がデフで得たコミュニケーションの魅力を伝えようと全国の学校へ出向き講習会を実施している。2016年からは、紀の川市の体育館でチャリティーイベント「mix+inわかやま」を開催。健常者と障害者の壁だけでなく性別、人種、職業の垣根を取り外し共に汗を流している。「選手に思う事は…メダルを取ることも大事ですが共に発展し幸せな人生を送らせてあげたいです」と語る上田さん。言葉はなくても真剣に向き合うことで、気持ちはしっかりと伝わっている。(コラムニスト)



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