松野工業

トンネル工事支える 枕木にレール固定する部品 多種多様、クリップ製造

あきない見聞録

 京セラドーム大阪のおひざもと大阪市西区千代崎で主にトンネル工事用のレールを枕木に固定する部品「レールクリップ」を製造。長年にわたり、交通やライフラインなど人々の生活に密接する重要な工事をしっかりと支え続けている。

 川に近い同区の九条周辺は、古くから金属加工業の集積地として知られるエリア。同社は1967年、松野章宏社長(54)の父・光宏さん(故人)が同業種から独立して創業。松野社長は日本の大手鉄鋼メーカー勤務を経て、1996年に帰阪し家業を継承した。

 トンネルは一般に知られる鉄道用のほかに、電気・ガス・水道といったライフラインをまとめる共同溝などさまざまある。大きさも多種多様で、工事用レールの規格も現場の規模によって異なり、シールドマシンなど搬入・搬出する機材の大きさ、重量に応じたサイズを敷設する。クリップは、さまざまな規格のレールの底部を押さえて枕木(H形鋼)にボルトや溶接で固定する構造で、規格に応じたサイズが必要となる。

 同社では現在「MIC(マツノ・インダストリー・カンパニー)」のブランドでサイズ別に約10種類のクリップを製造。工法として同業他社では鋳造の割合が高いが、同社では一貫して鋼材からの削り出しを手がける。

 製品は日本各地の地下鉄や共同溝工事現場のほか、製鉄所内の専用線など多く現場で使用。過去には工事現場の入り口に使う大型カーテンの金具や、梅小路蒸気機関車館(京都市)の転車台に使われるローラーなども製造していた。

 工事用レールやクリップは工事の終了とともに撤去されるため、路線開通時には存在しないという宿命があるが、松野社長は「工事の特殊性から一般の人の目に触れることはないが、自社製品が現場の一端を支えているということはうれしい」と話す。

 地元の千代崎連合振興町会長で西区地域振興会会長を務めており、町内会の旅行でJR東海「リニア・鉄道館」(名古屋市)を訪れた際、展示車両を支えるレールのクリップが自社製品だったこともあった。

 製品の送り先によって、リニア工事など、どのような事業に使われているかはおおむね把握できるという松野社長。同業の工場で高齢化が進んでいる現状も踏まえ、製品供給ができなくなった際の影響なども気に留めながら、日々重要なものづくりに励んでいる。

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