Le tonton(ル トントン)

野菜主役の優しいスープ 仏料理店、全国発送も 飲む人の体調にも配慮

あきない見聞録

 緑豊かな住宅地にある創作フランス料理店に、国内外から根強いファンが集まっている。中田淑一オーナーシェフ(54)のこだわりは、近隣で取れた新鮮な旬の野菜を使い、客一人一人の「ストーリー(物語)」に寄り添うこと。昨年6月からは看板メニューの野菜と米こうじを使ったスープを全国発送する事業を始めた。厨房(ちゅうぼう)でことこと丁寧に煮込んだスープは、子どもから高齢者まで幅広い世代に「食べる喜び」を届けている。

 中田さんは、九州沖縄サミット(2000年)や寝台特急トワイライトエクスプレスの最後の特別メニュー(14年)を手がけた料理人。辻調理師専門学校で30年以上にわたり学生の指導を務めた後、21年12月に同店をオープンした。

 野菜が主役のスープを作るきっかけは、親の介護。「年老いた両親は市販の弁当が半分以上食べられず、冷凍庫は残ったものを詰めたタッパでいっぱい」。何とか食べる喜びを忘れないでほしいと即興でスープを作り、改良を重ねてきた。

 自身も30代の頃、血管の病を患い入院、点滴だけの生活を余儀なくされた経験があり、改めて料理人として「自分に何ができるのか」を思い返す機会にもなったという。

 スープは、レストランで提供しているものと基本的に同じ内容で、野菜のブイヨンを使用し、米こうじでとろみをつける。メインとなる野菜は季節ごとに「旬のもの」を選ぶ。日頃から付き合いのある豊能地域などの生産者から直接仕入れ、「野菜の言い分」にしっかり耳を傾けながら分量や火加減を調整し、約2日かけて仕上げていく。

 「味の隙間」をあえて残すのが、販売用のポイント。大切な人、特に終末期を迎えた人に送ることを考え、「料理には各家庭の味がある。できれば一度飲んで、味を足したり、のばしたり。そうすればあなたも料理に参加できる」と気持ちを込める。

 注文は電話で受け付け、野菜の希望や飲む人の年齢や体調にも細やかに対応。贈り物の場合は、送り手のメッセージを添えることもできる。180グラム入り6パック5400円。

 中田さんは「自分と同じ介護している人のことを考えて販売したが、ふたを開けてみると生まれた子どもや遠方にいる息子、母の日など多くのお客さんがさまざまな『誰かのために』お買い求めになっている。皆さんの思いをスープを通して届けてほしい」と呼びかける。

■代表者 中田 淑一
■住 所 大阪府豊能町ときわ台1の5の7
​■電 話 070(1361)6761

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