金井啓子の現代進行形

4日にファクトチェックの講演

2018年2月1日

米国の実情に学ぶ

 「フェイクニュース」という言葉を私が強く意識したのは1年前。ワシントンDCのナショナルモールという広い公園の大きなスクリーンで大統領就任式典を見守ったときだ。公園には賛成派、反対派が多くいたが、ゆったり歩き回れる混み具合だったのでさまざまな話を聞けた。

 だが、その後に報道された2枚の写真を見た新大統領や報道官の言葉に耳を疑った。その写真とは、8年前のオバマ大統領就任式と今回の公園の様子を高い所から撮影して比較した写真である。それは虚偽であって今回史上最大の人々が集まったと新政権側は発表したのだった。だが、群衆が公園を埋め尽くす前者に比べ人が少なめな後者は私の実感とも合っていた。私がいた場所で起きたことが権力者に「フェイクニュース」として否定されてしまうことに不気味さを感じた。

 権力者が自身に批判的な報道機関を「フェイクニュース」(を発する存在)と批判する問題は対岸の火事ではない。橋下徹氏は大阪市長時代に自身に対して批判的に報道することが多い新聞やテレビを公の場で何度も攻撃した。あってはならないこととはいえ、時に誤報を出すのはどんな報道機関にもつきものだ。だが、それをもってその報道機関が伝えるニュースがすべて虚偽だと断じることはできない。

 フェイクニュースという言葉の使い方や種類には人によって解釈もさまざまだが、私は三つに大きく分けている。一つ目が前述した権力者による「レッテル貼り」。二つ目が、いたずら目的、あるいはアクセス数を稼ぐための「明らかなウソのニュース」だ。そして、もう一つは自らの主張や思い込みにより、根拠の希薄なデータや事象といったうわさに過ぎない情報を拡散するケースだ。

 最近では、産経新聞と琉球新報がバトルを繰り広げている。沖縄市で米海兵隊員が重体となった交通事故をめぐり、産経新聞は、隊員は日本人救出の後に後続車にはねられたとして「勇敢な行動」を報じない地元紙を批判したが、琉球新報は海兵隊が「(隊員は)救助行為はしていない」、県警が「救助の事実は確認されていない」と回答したとして反論した。まだフェイクニュースと確定したわけではないが、「米軍に日頃から批判的な地元紙なら米軍の“美談”を握りつぶすだろう」という思い込みが背景になかったのか、気になるところだ。

 こうしたフェイクニュースの悪影響を減らす一助となりうるのが、情報や言説の信ぴょう性を確認する「ファクトチェック」である。ファクトチェックに関して先行する米国からピュリツァー賞を取ったファクトチェック団体「ポリティファクト」の副編集長を招くセミナーが2月4日に東京で開かれる。主催するファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)の会員になればインターネット上でライブ配信を見られる。参加をおすすめしたい。

 (近畿大学総合社会学部教授)