天皇の記者会見、かつてのように活性化を

  •  現代象徴天皇制の研究で知られる名古屋大大学院准教授の河西秀哉さん

 天皇は2月23日、65歳の誕生日を迎え、それに先だって記者会見を行いました。天皇が、自分の意思を世間に発する数少ない機会が、この記者会見です。今回は、天皇や皇族の記者会見の歴史を見ながら、彼らの意思はどう発すればよいのか考えてみます。

 戦前、天皇や皇族が記者会見をすることはありませんでした。その動向は報道されつつも、やはり「雲の上の人」だったのです。記者が直接彼らに接し、その言葉を伝えることはできませんでした。側近を通じてしか、知る機会がなかったのです。

 それが変わったのは、アジア・太平洋戦争の敗戦が契機でした。1945年12月22日、昭和天皇は皇居内で宮内省担当記者たちと会います。敗戦によって天皇の戦争責任が内外で叫ばれているなかでの出来事でした。天皇の人間性をメディアにアピールして記事にしてもらうことで、戦争責任を回避しようとしたとみられます。

 ところがおもしろいのは、宮内省は記者たちとの「会見」を用意したとは言いませんでした。あくまで、記者が集まっているところに、天皇がたまたま通りかかり、そこで会話をしたという形式にしたのです。もちろん、実際には事前に準備されていましたので、こ...

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