香美町香住区出身でフランス在住のパステル画家、岡部一宏さん(68)の個展が、新温泉町の浜坂先人記念館・以命亭で開かれている。同国の自然や果物を繊細なタッチで描いた作品が並び、独自の世界観が来場者を魅了している。25日まで。
岡部さんは多摩美術大(東京都)を中退後、画材メーカーなどで勤務していたが、約30年前に画家を志して渡仏。現地のパステル画用紙に表現の可能性を感じ、独学で描き始めた。現在はパリ郊外で創作活動に励んでおり、国内外で評価が高い。
但馬地域での個展は2021年以来となり、同館では18年ぶり。今回は「自然と人」をテーマに、11年から描きためた39点を展示した。
ポスター題材の「サルビア―不思議な公園の風―」は、雨雲と風に揺れる鮮やかなサルビアやダリアの対比が、物語の始まりをにおわせる作品。「セーヌ川の風景」は、不透明水彩絵の具の上からパステルを重ね、波打つ水面の質感と奥行きを忠実に表現している。
岡部さんは「全ての作品の背景にはストーリーがある。モチーフとの出会いや描くまでの経緯を探し出してみては」と来館者に呼びかけていた。期間中は岡部さんも来館する。木曜休館。