マイクロM&A士協会

小企業のM&A支援 税理士など会員60人 事業承継、地域経済守る

あきない見聞録

 後継者不足による中小企業の廃業急増が懸念される中、企業の合併・買収(M&A)が事業承継の選択肢の一つとして注目を集めている。マイクロM&A士協会は、税理士を中心に構成する会員が売上高1億円未満の小企業を対象とするM&Aを支援している。

 税理士としてM&Aも手がけていた都鍾洵(みやこしょうじゅん)代表が2022年5月に設立。現在、税理士の他に社労士や弁護士など約60人の士業の会員が在籍している。

 小企業は手数料報酬が低いため、M&A専門会社からの支援を受けにくいのが現状。会員は士業で企業との顧問契約が本業のため、手数料報酬は原則として50万円に設定している。相談者は会員の顧問先が多く、「強引に進めることはない。M&Aの認知度向上とポジティブイメージを広げていくことが重要」(都代表)とし、会員に対してノウハウの提供や案件の紹介を行う。

 都代表は税理士として、飲食店や美容室、介護デイサービスなど20件以上のマイクロM&Aを支援。

 2020年5月の事例では、売り手と買い手のニーズが見事に一致した。新型コロナウイルス禍で休業した音楽教室のオーナー社長が廃業を検討していたが、教室の防音設備の解体・撤去費用に500万円かかる。買い手は音楽教室の開業を目指すピアニストの女性で、教室には防音設備が必要だった。

 M&Aの成立で、売り手は原状回復費用が不要となった上に譲渡金が入り、買い手は初期投資を抑えるとともに生徒を引き継いで教室をオープン。売り手の社長は「講師や生徒さんも引き継ぐことができた」と安堵(あんど)し、買い手の女性は「開業初期から黒字でスタートできた」。

 マイクロM&Aの主な手順を売り手側から見ると、ビジネスモデルや過去の決算数値などを記した企業概要書の作成▽企業概要書の内容を要約したノンネームシートによる買い手候補探し▽秘密保持契約を結んでの企業概要書の開示▽トップ面談▽意向表明▽基本合意契約▽監査を実施して開示資料を確認するデューデリジェンス▽譲渡契約-という流れになる。顧問を務める税理士がM&Aを仲介すれば、必要書類の作成時間を大幅に短縮し、低額の手数料報酬で対応できる。

 都代表は「一人の税理士ができるM&Aの仲介は多くても年間3、4件。多くの会員がM&Aに力をいれることで地域経済を守ることができる」と会員増強に意欲を見せる。

■代表者 都鍾洵
■住 所 大阪市北区西天満5の16の3 西天満ファイブビル6階
■電 話 06(6360)2811

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