直木賞作家の角田光代さん(57)が23日、新作「方舟(はこぶね)を燃やす」の主人公ゆかりの鳥取市を訪れ、同市叶の今井書店吉成店でサイン会に臨んだ。約100人のファンと笑顔で交流し、握手や写真撮影にも応じた。
角田さんは2005年「対岸の彼女」で直木賞を受賞後、数々の文学賞を受賞した人気作家。サイン会は、2月下旬に発売された新作の主人公が同市出身という設定であることが縁で実現した。
「方舟-」は昭和、平成、コロナ禍を生きる男女2人のそれぞれの人生を追った小説で、デマやフェイクニュースが行き交う世の中で「信じること」の意味を問いかける作品。角田さんは15年ほど前、同市を取材で訪れた際、途中まで執筆した冒頭部分を活用し今作を書き上げたという。
「コロナ禍をきっかけに、人はどうやってデマなどに翻弄(ほんろう)されてきたのかについてを考えるようになった。読む人それぞれが、好きなように感じ取ってもらいたい」と話した。
会場には、ファンが新刊と整理券を手に列をつくった。ファン歴約6年の60代女性は「(角田さんの作品の)人間の深い部分に気付かされるところが好き。この作品には鳥取の方言も多く出てくるので読むのが楽しみ」と笑顔だった。