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ドキュメンタリー映画「やさしくなあに〜」監督に聞く

2017年11月10日

 「長く生きられない…」。2歳だった奈緒ちゃんは医師に告げられた。そんな奈緒ちゃんの8歳から43歳の今日までを撮り続けたドキュメンタリー映画「やさしくなあに〜奈緒ちゃんと家族の35年〜」(いせフィルム)が11日から大阪・十三のシアターセブンで公開される。両親と弟の4人が「みんなで生きている時間を見てほしい」という伊勢真一監督(68)に話を聞いた。

「2歳だった奈緒ちゃんが今は44歳になった…」と話す伊勢真一監督=大阪・十三のシアターセブン
「やさしくなあに〜」の一場面。神社でお祈りする奈緒ちゃん(右から2人目)とその家族

 伊勢監督は「大丈夫。−小児科医・細谷亮太のコトバ−」「傍(かたわら)〜3月11日からの旅〜」など多くの優秀なドキュメント映画を発表している。その中で唯一シリーズで撮っているのが「奈緒ちゃん」で今作が4本目。てんかんと知的障害のある女の子で「家族の愛に包まれてみんなで元気に生きている35年」が映し出されている。

 「奈緒ちゃんは僕の姉・西村信子の長女。彼女に障害があるのを知り、2歳の時に医師から『長く生きられない』と聞いてショックを受け何もできなかった。僕が映画の仕事をするようになって奈緒ちゃんが8歳の時、彼女の『元気な姿を撮ろう』と決めた。それを姉家族に見せて励まそうと思った」

 撮影を始めて12年目の1995年に第1作が完成。「だんだん元気になる奈緒ちゃんと、それに連れてお母さんも一緒に元気になっていった。最初から一緒に仕事をした瀬川順一カメラマンががんでなくなってこの仕事は終わろうかと思ったが、周囲の応援の声もあって『元気な奈緒ちゃん』を撮ることやめる理由はなかった」

 2作目「ぴぐれっと」は母親が地域作業所を開いて、そこに奈緒ちゃんが通う様子、3作目「ありがとう〜奈緒ちゃん・自立への25年〜」は30歳になった奈緒ちゃんの自立をめぐる家族の葛藤が記録された。1〜3作はキネマ旬報文化映画部門のベストテン入りして作品としても高く評価された。

 今作の発表を前に昨年、相模原市の障害者施設が男に襲われ多くの利用者が殺害されるという悲惨な事件が起きた。「奈緒ちゃんの家族もつらい思いをしたが、僕は奈緒ちゃんの映画を撮りながら、元気な奈緒ちゃんの顔を見ていて励まされていると思った。奈緒ちゃんの家族も同じような思いがあった」

 映画は8歳の時に奈緒ちゃんと家族が神社でお参りするところから始まり、43歳になって同じ場所で同じ事をするシーンで終わる構成になっている。タイトルは奈緒ちゃんが日ごろ使っている言葉で「なかよくしよう」の意。2歳の時に祖母が描いた奈緒ちゃんの顔の絵をポスターに採用している。「奈緒ちゃんと同時に、一緒に暮らしている家族それぞれの顔も見てほしい」

 上映は11〜24日、30日、12月1日。「伊勢真一監督特集」の一環で、これまでの作品も日替わりで上映される。12、20日は伊勢監督のトークショーがある。