連載・特集

あきない見聞録

地場野菜使う冷凍食品

「貴   重」
(大阪市大正区小林西1丁目)
広里 貴子ごちそうプロデューサー
2009年4月7日

田辺大根ピクルス商品化

なにわの伝統野菜を取り入れた貴重の人気ナンバーワン商品、「大阪ピクルス」

 大阪産の野菜を使った手づくり料理を、主に冷凍でネット販売する貴重。健康志向の高まりを受け、女性を中心に着実にファンを広げている。

 もとは社長を務める広里重子さん(60)が、夫の常之さんと機材の再生修理工場を営んでいた。十五年前に五十二歳で常之さんが交通事故で亡くなって以来、重子さんが一人で会社を切り盛りしていた。

 しかし製造業のアジアへのシフトが進み、受注が減少。そんな中、日本料理の講師だった長女の貴子さん(32)と二〇〇六年四月、同社を立ち上げた。大阪産の野菜に着目し、「なにわの伝統野菜」など、地場野菜を多くの人に知ってもらいたいとの思いだった。

 一見、畑違いの分野への進出にも思えるが、「もとは、わたしは八百屋さんの娘。学生時代は実家の手伝いもしていたので、食材を扱うことに違和感はなかった。なにわの伝統野菜などを伝えていくのが、わたしの最後の恩返し」と重子さんは創業時を振り返る。

 ごちそうプロデューサーとして、商品開発などを手掛けるのが、貴子さん。イタリアン風の毛馬胡瓜(きゅうり)のトマト煮や、勝間南瓜(なんきん)の中に玄米を入れたドリアなど、素材を生かしながらも、斬新なアイデアの商品を次々と生み出してきた。「冷凍食品でも季節感を大切に、時期のものを食べてもらえるようにしている」と貴子さん。

 ただなにわの伝統野菜などは生産量が少なく、出荷時期が短いなど、一年を通じて食材を確保するという点での課題もある。また中国製冷凍ギョーザの中毒問題が起こった際には、冷凍食品のイメージが敬遠されたのか、一時的に注文が落ち込んだことも。

 一方で冷凍食品だけにとどまらず、田辺大根など大阪に伝わるなにわの伝統野菜を具材に使った「大阪ピクルス」も商品化。冷凍食品に比べ賞味期限が限られるが、現在では同社の人気ナンバーワンの商品に成長している。

 「まじめにお客の信頼を裏切らない商品を作っていこうと。身の丈で大阪産の野菜を広めて、皆さんに喜んでもらえたら」と貴子さん。「決して恵まれた環境ではない中で育つ大阪産の野菜は、根性がある。それを食べた人が元気をもらって、生きる源となる料理を提供していきたい」と重子さん。親子の夢はこれからも続く。


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