鳥取市用瀬町の千代川で旧暦3月3日(4月11日)に行われる伝統行事「用瀬の流しびな」に向けて、地元で紙びなの準備が最終段階を迎えた。6日には、本番を前に住民らが思いを込めて制作にいそしんだ。
江戸時代から続く用瀬の流しびなは、男女一対の紙びなを桟俵に乗せ、川に流すことで無病息災を願う。県無形民俗文化財に指定されており、2021年3月には国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選ばれた。
この日は、用瀬2区の住民を中心とする「ときわ流しびなの会」(長谷川正敏会長)のメンバー7人が地区の公民館に集まり、作業に参加。町内産もち米の稲わらを編み込んで直径約20センチと約15センチの円形の桟俵を作り、紙粘土でできた男女一対のひな人形を添えていった。人形の大きさや顔の表情の違いも楽しめる仕上がりで、11日までに400セットを完成させる。
同会のメンバーは多い時で約20人ほどだったが、現在は半減。稲刈りが終わった毎年10月ごろから準備に取りかかり、住民の楽しみの一つとなっている。
長谷川会長(72)は「健やかな成長や夢、希望など、流す人の思いを込めて一つ一つ丁寧に作っている。今後も伝統文化をつないでいきたい」とし、近くに住む橋本千代子さん(80)は「手作りの良さを感じてもらえたら」と話した。