新温泉町は4日、郷土の偉人を題材にした偉人マンガ冊子第2弾の完成を発表した。題材は昨年に没後100年を迎え「飛騨聖人」と呼ばれた同町諸寄出身の社会教育者、篠原無然(むぜん)(1889~1924年)。冊子は町内の歴史や文化を知るふるさと教育に役立てもらうため、町内の各小中学校に配布し、ゆかりがある岐阜県高山市平湯周辺の学校などにも贈る。
無然(本名、禄次(ろくじ))は廻(かい)船問屋を営む家に生まれ、高等小学校卒業後に県立神戸商業学校に進学。家業が傾いたため学費を稼ごうと過労で体を壊し、退学して帰郷したが、回復後に早稲田大文学部に入学した。
在学中、青年団の使命や農村の女子問題を各地で講演したが「人界に師なし」と考え、自然の中に身を置くことを決意。大学を中退して岐阜県・奥飛騨の平湯地区で教員を務めた。36歳の時、東京から平湯に戻る途中で吹雪の安房峠(岐阜県)で遭難死した。
神戸商業学校時代に知己を得た鉄道院総裁の後藤新平を通じ、大学時代には板垣退助や新渡戸稲造など政財界の大物とも親交があった。平湯では教壇に立つ傍ら、青年男女を集めた夜学を開催し、社会活動への参画を促すなど社会教育に傾注。地域経済の発展にも情熱を注ぎ「飛騨聖人」と呼ばれた。
冊子は全134ページで、千部制作。2023年度から制作に取り組み、資料や手記など文献を基に、町や町教委などでつくる制作委員会がシナリオを作成した。作画は同町出身の介護士の中沢大作さんが手がけ、各委員が手分けして作成したコラムも入れた。
水谷和尚委員長は「子どもたちが先人の功績を興味深く学べるいい教材ができた。社会教育者の先覚者を、ぜひ知ってもらいたい」と感慨深く話した。
希望者には浜坂先人記念館以命亭(同町浜坂)で1冊700円で販売する。