松江市の口承文芸研究者、酒井董美(ただよし)さん(89)が「QRコードで聴く鳥取の労作歌」を出版した。本紙文化面で2024年4月~25年2月に連載した内容を書籍化。鳥取県東、中、西部の労作歌15曲ずつ計45曲を紹介している。
酒井さんは中学校教諭だった1960年から30年以上にわたって山陰各地を訪ね、実際に口承文芸を歌ってもらって録音する活動を続けた。「民話」「わらべ歌」「民謡・労作歌」の分類で鳥取、島根両県のものをまとめ、これまでに計5冊を出版。今回で全て書籍化できた。
「鳥取の労作歌」は、子守歌や盆踊り歌、建物の建築前に土地を固める地締め歌などを酒井さんが解説。スマートフォンでQRコードを読み込むと、歌声を聴くことができる。
三朝町で88年に録音した臼びき歌は、1907(明治40)年生まれの男性が披露してくれた数多くの歌や昔話の中の一つで、酒井さんの印象に残っている歌。農作業の大変さを表現した田植え歌も収録されている。
酒井さんは「こうした歌は無形文化財として大切にすべき地域の財産。多くの人に知っていただきたい」と話す。今井出版発行。A5判、98ページ。1980円。