井辺 圧巻のレース運び 第41回全日本トライアスロン皆生大会

 「第41回全日本トライアスロン皆生大会」は、連覇中の王者と女王が他を寄せ付けない圧倒的な力を見せつけた。

 男子は、バイクでトップに立った井辺弘貴(28)=和歌山県=が、2位に10分以上の差をつけて3連覇を達成。2位には昨年の佐渡国際トライアスロン大会(新潟県)覇者で初出場の荒瀬壮兵(35)=東京都=が続いた。久しぶりの出場となった福田宰(46)=大阪府=が3位入賞した。高橋正俊(30)=和歌山県=は前回と同じ4位だった。

 女子は、総合でも5位に入った高橋真紀(31)=和歌山県=が、2位に1時間以上の差をつける盤石なレース運びで3年連続の女王に輝いた。10時間を切った寺木佐和子(39)=愛知県=が2位。3位は伊藤あすみ(38)=和歌山県=が入った。

「自分のペースで走れた」

 「強い選手が多く、正直連覇する自信はなかった」と言いフィニッシュ直後は、5分遅れでスタートしたスイム第2ウエーブの選手とのタイム差を気にした。大会3連覇が確定すると井辺弘貴(28)=和歌山県=は「とてもうれしい」と笑った。
 3連覇への意識はあったが「レース中は考えないようにしていた」。スイムを5位で通過すると、バイクの10キロ地点辺りでトップに立つ。しかし、その後は山岸穂高(25)=千葉県=と激しいデッドヒートを繰り広げた。山岸には4月の宮古島大会で敗れており、「ランが強い選手なので優勝は厳しいかも」と弱気になる瞬間もあった。それでも「自分は暑さに強いから勝てるチャンスはある」と気を取り直した。
 ランでは後続を引き離し、2位に10分以上の差をつけてフィニッシュした。「最後はきつかったけど、自分のペースで走れてよかった」とレースを振り返り、「皆生らしいアップダウンが激しいコースと厳しい暑さの中、勝ち切れたのは大きい」と喜んだ。
 最高気温37度の猛暑。「タイムは伸びなかったが、そこまで暑さは感じなかった」と集中力をうかがわせた。解禁された沿道の声援を受け「活気があり、給水でも元気をもらった」。「ボランティアが少ない中でも開催してもらえ、ありがたい」と感謝した。
 今季はこれまで3レースを戦い、皆生大会が集大成だった。「来年もまた皆生を走るために練習したい」と前を向いた。(盛山友歌)

高橋 思い描いた展開

2位に1時間以上の差

 「とにかく、ここまで帰ってくるので精いっぱいだった。家族3人で1位のフィニッシュテープが切れてほっとした」―。最高気温37度を記録した酷暑のレースを制し、3連覇を飾った高橋真紀(31)=和歌山県=は安堵(あんど)の表情を見せた。
 昨年は産後3カ月で、十分に仕上げられないまま出場。今年は1年かけて過去の自分を取り戻そうと練習に励んだが、「辞退も考えた」というほど不安を抱えたままスタートを迎えた。
 「1人、若くて強い選手がいたのでスイムは先行されると思ったが、トップで通過できたのでバイクとランはマイペースで走れた」と思い描いた展開に。過去2回と違い、うだるような暑さとなったが「風が強くて暑さを感じなかった」と涼しい顔でトップを走り続けた。
 バイクの100キロ過ぎで夫・高橋正俊(30)=同=を抜き、「勝ってやろう」と思ったが、ランの15キロ過ぎで抜き返された。それでも男子顔負けのレースで夫に次ぐ総合5位に食い込んだ。フィニッシャーズストリートでは長女・蘭ちゃんも加わり、3人そろってフィニッシュ。2位に1時間以上の差をつける圧勝劇だった。
 4月から地元の和歌山に拠点を移し、子育てをしながら練習に打ち込める環境が整った。次の目標は夫婦で出場する国体。「もう一度、ベストパフォーマンスを出したい」と先を見据えた。(岡野耕次)

「絶対に勝つ」強い気持ちで

リレーの部優勝「カタセイコンパーニョ」

 昨年、鳥取県市町村対抗リレーに「日吉津村」で出場して優勝したメンバーが再び自転車チーム「カタセイコンパーニョ」の下に集まり、リレーの部を制した。3人は「全員が『絶対に勝つ』と強い気持ちを持っていたからこそ」と声を弾ませた。
 2度目の大会挑戦となったスイムの近藤至宏(37)=日吉津村=が、トップと7分差の8位で泳ぎ切り、バイクの片岡敏一(50)=米子市=に。「2人からのプレッシャーが半端なかった」と近藤が笑う傍らで、片岡、ランの深田誠(50)=同=は「差が10分以内なら優勝できると確信していた」と言い切る。
 その通り片岡は力強い走りでごぼう抜きし、トップに躍り出た。たすきを受けた深田もさらに差を広げ、2位と約30分差でフィニッシュした。
 深田はチームメンバーを変えながら圧巻の5連覇中。「来年も同じメンツで優勝を狙いたい」と意気込むが、「心配材料は年齢だ」とおどける。
 笑顔でテープを切った3人。「祝勝会はもちろん焼き肉で」と喜んだ。(池田悠平)

何とかまとめられた 男子2位 荒瀬 壮兵(東京)

 初出場の皆生大会を「何とかまとめられた」と振り返る。バイクで痛恨のコースミス。「つぶれるんじゃないかと思うほど必死だった」。バイクを3位で終え、ランは「2位は死守しよう」と懸命に走った。「鳥取県はいい所。また帰ってきたい」と意気込んだ。

予想より上位だった 男子3位 福田  宰(大阪)

 仕事の関係で2008年以降は出場できない中、続けていたランニングだけでは物足りなくなり、トライアスロンへの情熱が再燃。15年ぶりの出場を決めた。復帰戦を3位で終え「予想より上位だった」と驚きながらも「楽しかった」と満足顔で締めくくった。

無理しない と挑んだ 女子2位 寺木佐和子(愛知)

 「完走できたらいいと思って臨んだ結果、2位が付いてきた感じ」と驚きの表情を浮かべた。「無理はしない」と挑んだ今大会は、前回より一つ順位を上げた。暑さと苦手なバイクに苦戦しつつも「ボランティアに支えてもらった」と喜びをかみしめた。

給水所での応援感謝 女子3位 伊藤あすみ(和歌山)

 「暑くてバイクの途中で何度も止まろうと思った」。前回4位から順位を上げた。得意なバイクで心が折れかけたが、給水所で子どもたちの応援とサービスに助けられ、苦手なランで想像以上の力を発揮。「あのサポートなしでは完走できなかった」と感謝した。

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