吉武英行 五感の旅

宿の良しあしは…

2021年5月17日
“おもてなし”に妥協しない姿勢が大切

 ホテルや旅館関連の仕事をしているせいか、よく聞かれるのが「どこのホテルがおすすめ?」「どこの旅館が良かった?」。そう言われても答えに困ることが多い。良いか悪いか、その時々によっても違うし、料金面の問題もある。高いところはそれなりに良いし、かといって安いところが悪いとも言えない。結局、千差万別でどこが良いのか悪いのか分からなくなる。

 宿の良しあしは経営者の考え方で大きく変わる。お客に対してのおもてなしに妥協をしない。例えば、温泉旅館にありがちな風呂場での光景を紹介しよう。一般的に、仲居さん、調理場で働く人たちは、仕事終了後、旅館のお風呂を利用することが多い。いつも隅っこで、気まずそうに一般のお客さまに気を遣いながら利用しているのをよく見かける。

 しかし、筆者の考え方も同じだが、ある旅館経営者は言う。社員の温泉利用は礼儀正しく堂々と利用する。風呂から上がる際は、洗い場等の整理、清掃をきちんとする。お客から見る従業員の節度が伝わる行動を心掛けることで、逆に高評価を得ることもできる。

 「おおらかな社長がつくる親切いっぱいのホテル」。このホテルのフロントクラークに尋ねたことがある。「すみません、時刻表ありますか?」と言うと、「どちらまでですか。お調べします」と年配のフロントマン。たったこれだけのことなのだが、ひと味違う。一般的に時刻表までは貸してくれる。しかし、問題はそこから先である。

 つまり「お調べしましょう」という言葉が出てくるかどうかがサービスの良しあしを決めるのである。「情報化の時代において顔を合わせて話す機会が少なくなっているからこそ、なるべくお客さまにお声掛けをする」のだと。素晴らしいサービス教育である。ホスピタリティーを身につけてほしいと願うばかりである。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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