【小川糸 一筆申し上げます】新品割り箸での火入れ 老舗ホテルで違和感

  •  小川糸

 数年前になりますが、日本を代表する山岳リゾートのホテルに宿泊しました。由緒正しい老舗のホテルです。以前から憧れていた、人生で一度は泊まってみたい宿でした。

 部屋にはすてきなバルコニーがあり、大自然が一望できました。室内には時間と共に味わいを増した美しい家具が品よく置かれ、隅々にまで愛情が配られているのを感じることができました。

 レストランでの夕飯を終え、私は足早にロビーへと向かいました。このホテルの顔とも言えるマントルピースへの火入れの瞬間に、ぜひとも立ち会いたかったのです。

 心から楽しみにしていたのですが、途中から私は目を疑ってしまいました。火をおこすために、大量の割り箸が投入されたのです。確かに、乾燥していて大きさもちょうどいい割り箸は、火種とするのに便利かもしれません。けれど、使用済みの割り箸ならいざ知らず、新品の割り箸です。

 昨今、SDGs(持続可能な開発目標)は、はやり言葉のように社会に影響を与えています。地球に優しく、未来にも優しいサステナブルな取り組み。館内には、そのさまざまな実例が紹介されていました。が、私はまだ使える割り箸を火の中に次々と束で入れていくホテルマンの姿...

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