「鳥」をテーマに全国公募した「第30回記念大伴家持大賞」は、11日の最終審査会で各賞が決まった。一般の部は20~90代の幅広い層の作品が入選。ツバメやカラス、ハクチョウなどそれぞれの鳥を通して、心の動きを表現した個性豊かな作品がそろった。審査員からは「みずみずしく詩的で新鮮」「口語表現が成熟してきた」と評価する声が上がった。
一般の部大賞に選ばれた前川泰信さん(61)=岐阜県可児市=の作品について審査員で歌人の小島ゆかりさん(68)は動詞や形容詞を一切使わないスタイルに着目し、「斬新。端的な事実の報告の中に、とても面白いものがある」と指摘。県歌人会顧問の北尾勲さん(83)は「事実をそのまま出しながら、その背後にいろんなことが想像できる」と感心した。
準大賞は石井幸子さん(73)=広島県福山市=の作品「名を呼べばわれに飛び来てせろふあんがふるへるほどの小鳥の鼓動」。審査員からは「『せろふあん』という比喩が非常にいい」「微細で柔らかな感じが鳥というタイトルにふさわしい」などの講評があった。
児童生徒の部でも、鳥と自分との対比や重ね合わせ、害鳥に苦慮する家族の思いなど感じたことをストレートに詠んだ作品が光った。
大賞となった三原貴遥さん(13)=山口県周南市立桜田中2年=の作品について県歌人会会長の押本昌幸さん(72)は「発想の仕方が素晴らしい。そしてちゃんと自分を持って、それを表現できている」とたたえた。
大賞以外の受賞者は次の皆さん。
【一般の部】準大賞=石井幸子(広島県福山市)▽入選=古賀由美子(佐賀県唐津市)田内和夫(米子市)北原陸(大阪府高槻市)▽佳作=藤沢流凪(千葉県市川市)萩原亜季子(群馬県伊勢崎市)武田悟(宮城県涌谷町)阿部昌彦(新潟県村上市)新敦子(鳥取市)楠ナナオ(宮崎市)向後彰子(茨城県土浦市)緑川智(茨城県取手市)斉尾くにこ(北栄町)築森知子(島根県出雲市)
【児童生徒の部】入選=佐野晃太(神奈川・光陵高2年)松藤果南(西伯小6年)田中咲和(宮ノ下小2年)▽佳作=田中佑希(国府中3年)池上真央(神奈川・光陵高3年)金谷直哉(宮ノ下小6年)阪下瑠華(鳥取湖陵高2年)安達彩(青谷中2年)照田佳苗(神奈川・光陵高1年)井戸垣斗真(国府中1年)福田翠々(桜ケ丘中3年)右近紘慈郎(山口・山の田中2年)奥田真翔(桜ケ丘中2年)
【団体賞】宮ノ下小、国府中、湯梨浜学園中高
これからの励みに
前川泰信さんの話 高校教員をしており、鳥というテーマを知った時、2、3年前、実際に学校であったことを思い出した。大伴家持は授業でも取り上げるありがたい歌人。その大賞に選ばれたということは畏れ多く、定年という区切りの年にこれからも短歌作りに励むよう背中を押されたようでもあり励みになる。
自分の姿を重ねた
三原貴遥さんの話 歌で賞をもらうことは初めてで驚いている。小学生のころに好きだった、ツバメの英語の絵本を思い浮かべて歌にした。外国への旅に向け、子ツバメが困難を乗り越え成長していく姿に自分を重ね合わせた。頭の中で物語を作ることが好きなので、これからも想像力を働かせて歌を作りたい。