明治の作家、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が作品の中で「幽霊滝」として取り上げた日野町中菅の瀧山神社境内にある「龍王滝」を、島根県立大の学生12人が見学した。八雲について学ぶ「へるん探求」授業の一環。学生らは文学作品の舞台となった地で作品への理解を深めた。
龍王滝は、作品集「骨董(こっとう)」の一編「幽霊滝の伝説」で幽霊滝として登場する。八雲怪談の中でも残酷な結末を迎える作品で、山中の神社を肝試しで訪れた女性がさい銭箱を持ち帰ろうと手をかけると、幽霊滝の方からとがめるよう声がした。急いで引き返すと背中の赤ん坊の首がもぎ取られていた―という内容。
一行は瀧山神社で橋川史宮司(69)から神社の歴史について説明を受け、高さ35メートルの龍王滝を間近で見学した。短期大学部2年の福田勇誠さん(20)は「思っていたより細い滝で神々しく静かな印象。幽霊滝という名前の雰囲気にも合っていた」と話した。
同町中菅の住民有志による五平餅などの振る舞いもあった。八雲のひ孫で、島根県立大短期大学部名誉教授として授業を担当する小泉凡さん(63)は「五感を研ぎ澄ませて自らの足を運ぶことで初めて感じられることもある。地域の人が文学をどのように文化資源として生かしているかも学んでほしい」と話した。(高坂綾奈)