三朝町の賀茂地域協議会が高齢者見守り事業の一環として取り組んでいる「わたげの会」(倉本靖子会長)による「出張わたげカフェ」が、同町吉尾の「吉尾なごみの館」で開かれた。地区内外から男女11人が参加し、地域に残る昔話の朗読に耳を傾けて交流を深め、楽しいひとときを過ごした。
朗読劇に取り組む「みささ語り部の会」(谷本ホヅミ代表)が講師を務め、数々の昔話を披露。谷本代表は「ふるさとの民話」(酒井董美さん著)の本の中から吉尾の地名で話を探したところ、1902(明治35)年生まれの別所菊子さんが語った「似せ本尊」が見つかったと伝えた。
内容は、人を化かして悪さばかりするキツネが村人に追い詰められ、本尊に化けるものの見破られて遠方に追放される。数年後に弱りきった姿で吉尾に戻ってきたが、かわいそうに思った村人が住み慣れた吉尾の山に帰したという。
このほか近隣地域の昔話として、度胸のいい男が人を化かすキツネを懲らしめようとしたが、まんまと化かされる「丸山の孫太」や、旧佐治村に伝わる佐治谷話のうち、こっけいな「いもころがし」「カニのふんどし」などを披露。
参加者は谷本代表の方言とリズムに魅了され、話の世界に引き込まれて大笑いするなど和やかな時間を過ごした。
話に聴き入った谷口照子さんは「別所菊子さんがいたことを、祖母から聞いた覚えがある。地元に伝わる昔話があってうれしい。久しぶりに大勢でおしゃべりできて楽しい時間を過ごせた」と笑顔を見せていた。