「若者に人気の喫茶店に行きたい」。今年70歳を迎える自宅の大家とは、月に数回一緒に出かける仲だ。5月上旬の好天の日、彼女の希望で上海市中心部のカフェに同行した。席に着きコーヒーを飲んでいるすぐそばを、せわしなく出入りする青や黄色のユニホーム姿の配送員たち。カメラのシャッター音やペットの鳴き声が響き、店内はとにかく騒がしかった。
上海は世界でもまれにみるカフェ激戦区だ。解放日報系のニュースサイト「上観新聞」などによると、2024年末時点で市内のカフェ店舗数は9115店となり、世界首位だった。ただ23年末と比べ、438店(4・6%)減少していた。競争の激しさとともに店舗の淘汰(とうた)が進んでいる実態も浮かび上がる。
最近は消費スタイルの変化を反映して、店内スペースを持たないテイクアウト専門のカフェも多い。出前、宅配のサービスを利用した、中国全体の24年のコーヒー販売は3億杯以上で、うち上海は3285万杯だった。
「かつての上海にも喫茶店がひしめいていた」と大家。南京西路や淮海路の店で優雅な社交を楽しんだという。人々の交流の場から、効率重視の空間へ。上海のカフェは、今も昔も時代を映し続け...