吉武英行 五感の旅

海、大地と空海のいる場所 室戸岬

2020年8月3日
海からの波で荒々しいしぶきを立てる室戸岬

 室戸ユネスコ世界ジオパークの中核、室戸岬。紺碧(こんぺき)の海から波が押し寄せ荒々しい海岸にしぶきを立てる。常緑の木々が生い茂ったその先に、白亜の灯台が青空をバックに映えている。その風景には、大地と海が織りなす物語が流れているように感じる。

 室戸岬の記念撮影スポットにもなっている「中岡慎太郎」像の脇の山道を登る。標高30メートルの高さの展望台から、室戸岬の先端を望む。太平洋に鋭利な三角形で飛び出している岬は、東側は波が荒く、西側はベタなぎの対照的な表情を見せる。海岸付近で目につくのは多種多様な植物。室戸岬で修行していた空海に「それは食べられない」と断った“クワズイモ”なんていう植物も。

 岬から東海岸を少し歩くと、国道を隔てて二つの洞窟「御厨人窟(みくろど)」と「神明窟」が並んでいる。空海が修行した洞窟で、お経を100万回唱え開眼するに至った奇跡的な体験をした場所として伝えられている。この窟から眼前に広がる空と海を見て「空海」という名をつけたという逸話も残る。

 近くには、空海が使った行水の池もある。四国遍路で室戸岬では必ず立ち寄るスポットらしい。市内には24番札所の最御崎寺、25番札所の津照寺、26番札所の金剛頂寺の三つの霊場が。空海が室戸を大切に思っていた証かも。海と大地がせめぎ合う岬は、人が深く関わる場所である。

 地球がダイナミックに躍動し、大地の誕生を示す地形を各所で確認することができる。ここで見られる地層には「四万十帯」と呼ばれ、プレートの動きによる変形構造を残し、自身隆起と海水変動によって形成されたものだと聞く。この特異な土地で人々の生活、文化がつむがれてきた。室戸岬を巡る醍醐味(だいごみ)はまだまだ尽きない。

 (ホテル、旅館プロデューサー)



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