吉武英行 五感の旅

タオルが語るホテルの素顔

2021年8月30日
バスルームのタオルが全てを語る

 人は足元に生活が表れるという。高価な服を着ていても、靴や足がアンバランスな人を見ると、普段の生き方みたいなものを想像してしまう。ホテルの素顔は、客室のバスルームに備わったタオルから想像することができる。タオルひとつに、そのホテルのクオリティーやホスピタリティー精神、さらに文化レベルまで表れるのではないだろうか。

 欧州の五つ星ホテルのタオルは、大抵どこも充実している。広いバスルームのあちこちに積まれた、さまざまな種類のフカフカのタオルを見ると、何ともリッチな気分に。宿泊料が懐に痛いことも忘れて、幸福感に浸れる瞬間だ。五つ星でも途上国となると、かなりのバラつきがある。中にはシミがついているタオルがあったり、洗濯が不十分だったり。いちばん怪しげなのはバスローブ。

 ある途上国で、ハウスキーパーが前のお客が使ったバスローブをそのままハンガーにかけているのを友人が目撃。バリ島でバスローブや浴衣を備えることがはやっているのは良いことだが、使いまわしが目立つ。パリッとのりが効いた清潔な浴衣が当たり前の日本のホテルや旅館では考えられないことだ。

 国を問わず、紺色などの濃い色のタオルを置くホテルがあるが、汚れが目立たないことを期待して選んだのなら、それは逆効果。洗濯が完璧でないと不潔感が漂い、色がはげれば貧相になる。濃い色は管理の仕方で、おしゃれの一環なのか、汚れ隠しのつもりか、ホテルの姿勢が一目瞭然。日に何度もお客の手や体に触れるタオル。その中にホテルの本音が表れることを、どこのホテルも気づいてほしい。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



サイト内検索