吉武英行 五感の旅

ホスピタリティを身につける

2022年1月24日
ホスピタリティ精神で居心地の良いホテルライフを提供

 かつてホテルには印象深いホテリエの存在があった。「××ホテルに行くとあのお兄ちゃんに会える」。幼いころ、ホテル名からまず思い出すのは、お気に入りのホテリエの顔であり、彼らの一挙手一投足がそのホテル全体を“粋”なイメージに膨らませてくれていた。最近ではそんな構図はめっきり減少した。頭に浮かぶのは「人」ではなく、もっぱら違う「何か」となり、思い出せないことすらある。

 教育中の新人ホテルマンが言う。「いいサービスしたって日本はチップないんでしょ」。即、お金にならないことは無駄に思うのが今流。この傾向はお客サイドにももちろん見られるのだから、近い将来、いっそうサービスという付加価値は求められなくなり、愛想のいいホテルは「面倒くさい」と嫌われ、会話のないホテルのみ生き残る時代が来るかもしれない。そうなったら教育する筆者もいらなくなる。

 そもそもホスピタリティとは何ぞや。教えられる側の答えは「サービス」か「もてなし」。仕事場にしか存在しないと思っている。では、普段はホスピタリティって存在しないのか? 好きな人がいたら喜ばせたくなるし、後になって「優しくしたからお金ちょうだい」と言う? いつもありがとうってお母さんの肩もみして、見返りを請求する?

 “ホスピタリティ精神”を若い人は大げさに考えがちだ。ささいな日常にこそホスピタリティ精神は多く存在すると思う。「ホスピタリティ精神でお客さまに接し…」と、一気に気持ちを湧かせるよう若手社員に求めるホテルが多いと同時に、ホスピタリティの語源について説明するホテルが少ないのも残念である。居心地の良いホテルライフを提供したい。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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