吉武英行 五感の旅

もてなしの心はどこへ…

2022年1月31日
“もてなしの心”が宿泊客を呼ぶと思うのだが…

 コロナ禍が一時収まったかのように思えたが、またまたオミクロン株でリバウンドを見せている昨今、パブリック部門も客室もゆったりした南紀のぜいたくなリゾートホテルに宿泊した。タクシーの運転手さんにその評判を尋ねると、「以前はいいホテルやったけど…。近頃、高級ホテルはどこもガラガラ。あそこもうまくいってないらしい」。ホテルへ着くと「ほら、誰も出てこん」

 夜8時すぎ、玄関にスタッフの姿はなく、自分で荷物を引いてフロントへ。吹き抜け天井の豪華なロビーは閑散としていた。フロントスタッフの態度は丁寧とはいえ事務的。9時を過ぎても夕食が食べられる所を尋ねると、館内レストランの営業時間リストを渡された。このホテルはお客を歓迎しないのだろうか、リゾートらしいリラックスした空気は感じられない。高級感あふれる客室だが、1輪の花もなく殺風景。もてなしの心も感じられない。

 1泊の予定がもう1泊となった。ホテル移動も面倒なので延泊がベスト。初日はネット特別価格ということで1万2千円だった。翌日もこの価格で、とフロントで値切ってみたが、フロントマンは官僚タイプでまったく融通がきかず、シングルユースで1万9900円の一点張り。このサービスで定価の価値はないと思い、他のホテルへ移動することを決めた。

 移動先のホテルの料金はこの半額以下で、スタッフの接客も気持ちいい。ロビーで観光案内を見ていた筆者に若いベルマンが「観光にお出かけですか」と声をかけ、地図を持ってきてくれた。彼はホスピタリティーの精神を持っていた。スタッフの一人一人が訪れた人を歓迎し、その滞在を楽しませようという“もてなしの心”を持てば、宿泊客が押し寄せるに違いないと思いつつ、宿を後にした。

 (ホテル・旅館プロデューサー)



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